シリーズ『くすりになったコーヒー』


 ちょっと専門的ですが、もしかするととても重要な話です(詳しくは → こちら )。


●リン脂質とは、グリセリン(緑)に長鎖脂肪酸(灰)とリン酸(赤)とコリン(青)が結合して、石鹸みたいな性質がある。


 数多くの種類がありますが、ここには代表的な2つを絵で示します。図1をご覧ください。


 図1上段のホスファチジルコリン(PC)は、いわばシャボン玉を作っている材料のようなもので、シャボン玉が細胞だとしたら、実際の細胞膜はPCでできているということです。細胞の中にも小さなシャボン玉がいくつもあって、その膜もまたPCでできています。


●脂肪分解酵素でPCから脂肪酸2が外れるとリゾホスファチジルコリン(LPC)になる(図1下段)。


 LPCが膜を作ることはありませんが、その代りに細胞質の中で色々な役割を果たしているようです。細胞が生きて行くために無くてはならない存在ですが、役割の詳細はまだまだ解らない部分が多く残っています。


●コーヒーを飲むとLPCの血中濃度が下がる。


 これが冒頭に挙げた論文の実験結果です。コーヒー飲用習慣が2型糖尿病を予防することはほぼ間違いありません。コーヒーが脂肪の燃焼を促して、ダイエットに良いとのデータもあります。しかし、脂肪が燃焼して体重が減っても、血中の脂質が下がるというデータはほとんどありませんでした。今回の論文を詳しく読んでみました。


【実験方法】47人の習慣的なコーヒー愛好家が、最初の1ヵ月間(第1期)はコーヒーを控え、2ヵ月目(第2期)に1日4杯を、3ヵ月目(第3期)には1日8杯を飲みました。各期の最終日に採血して、計853種類の脂質を定量分析しました。


【実験結果】853種類のうち統計的に有意な濃度変化が見られたのは僅か3つで、3つとも[第3期<第2期<第1期]の順に濃度低下を示していました(表1を参照)。


 表1には3つのLPCの構造も書いておきます。コリン、リン酸、グリセリンは共通ですが、脂肪酸の不飽和数が異なっています。LPCカッコ内の数字は、最初が脂肪酸の炭素数、コロンの後は不飽和の数です。


●LPC(20:4)は免疫アレルギー反応を制御するアラキドン酸の原料になっている。


 コーヒーを飲むことでこのLPCが減少することが、病気の予防とどう関係しているのか、今は何とも言えない状態ですが、大いに期待がもてるのです。全日本コーヒー協会のホームページに、岡山大の杉本先生が「コーヒーはアレルギーを予防する・・・」と書いていますが、論文発表は見当たりませんし、真偽のほどは不明です(詳しくは → こちら )。


 今後の世界のコーヒー研究を待ちたい思いでいっぱいです。


(第381話 完)


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