シリーズ『くすりになったコーヒー』


 先ずは写真をご覧ください。この写真は「コーヒー・ハウス」という本の表紙です。何とも奇怪な絵だと思いませんか?
●コーンヒル(旧ロンドンの地名:第248話も参照)のコーヒー・ハウスは学生コンパ場だった。




 イギリスで最初のコーヒー・ハウスができたのは、ロンドンではなくオックスフォードでした(1650年)。どうしてロンドンではなかったのかと言いますと、ここは元々酒場が多く、学生、教授、政治家、芸術家・・・ありとあらゆる都市部のエリートらが、ロンドンから通うのにも便利がよかったのかも知れません。週末ともなれば、表紙の如く大変な大騒ぎだったと想像できます。


●酒場通いをする多くの人がアル中になったり肝臓病を患った。


 という風でしたので、その頃既にコーヒーが広まっていたアラビア、トルコ辺りからの留学生は、近くでコーヒーを飲める場所を欲しがって、コーヒー・ハウスができる前から、多分1650年以前からコーヒークラブを結成していたようです(一説によれば1637年)。クラブ員の人数が急速に増えて、教授たちも加わって、ついにコーヒー・ハウスを建てるまでになったのでしょう。


●オックスフォードの大人たちは酒場通いで満足だったが、若者たちは新々のコーヒー・ハウスに魅了され時代の変化を求めた。


 いつの時代も世の中を変えるのは若者であって、老兵が頑張り過ぎるとろくなことはありません。ですから、若者パワーのない地域は廃れてなくなる以外ないのです。1600年代のイギリスはそんな状態になっていました。小林章夫によれば「中世のイギリスはコーヒー・ハウスに救われた」のです。


●コーヒーは二日酔いの薬だった。


 若者中心のコーヒー・ハウスに人々が群がるようになり、コーンヒルにも出店されると、酒場の経営者らは黙っていられません。政治家に献金して閉鎖を嘆願したりしたようですが、時代の風は防ぎようがなかったのです。いつしか酒場の客たちもコーヒー・ハウスに入り浸って、アルコールの害を洗い流していたのです。


 最後に1つとっておきの話ですが、コーヒーの縁でオックスフォードとコーンヒルが結びつくことで、ケンブリッジ大学の学生と教授陣も加わって、イギリスのコーヒー・ハウスの実力は王室をも動かすほどに膨張しました。そして遂に1660年、英国王立協会(世界初の科学者の団体)ができて、イギリスだけに留まらず、欧州全域に科学時代が到来するのです。


●もう1つおまけに・・・オックスフォード大学のキャンパス近く、初代コーヒー・ハウスがレンタルしていた建物の1階で、今はお洒落な「The Grand Café」が営業しています。




(第251話 完)


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