シリーズ『くすりになったコーヒー』


「コーヒーは発癌物質?」の疑惑から、疫学研究メタ解析まで、コーヒーと健康の関わりが解明されつつあります。ここまで来ますと、毎日飲むコーヒーが病気を予防し、ついには健康寿命を延ばしていることを、信じないわけには行きません。少なくと海外のデータを他山の石と見て、日本人のデータ集積に拍車をかけるべきではないでしょうか?


●しかし、どんなに注意深く調べたつもりの疫学調査にも、想定外の落とし穴があるのである。


 今のところ落とし穴をなくすことはできません。ではどんな落とし穴があるというのでしょうか?筆者の知る例を2つ挙げてみます。


落とし穴(1)



 この事例は「病気になったのでコーヒーを止めた」人が調査対象に選ばれた場合です。アンケート用紙に最後の質問があるかないかで、逆の結果になってしまうのです。前世期に行われた初期の疫学研究では、こういう落とし穴があちこちに見られました。その結果「疫学調査は信用できない」との厳しい指摘があったのです。


落とし穴(2)



 コーヒーと喉頭がんリスクの関係を調べた実際の調査で、ハザード比1以上が観察されました。メタ解析の結果でも、ハザード比はやはり1以上になりました。つまり「コーヒーは喉頭がんの危険因子」ということになっているのです。しかし、これまでの調査に筆者は納得できていません。理由は落とし穴(2)があるからです。熱すぎる食べ物は喉頭がんの原因因子との調査結果があるのです。


●まだまだ別の落とし穴があるかもしれない。


 疫学調査の質問事項はずいぶん改善されてきました。と同時に調査人口が100万人単位に近づいて、交絡因子ごとの層別が可能になりました。調査の精度が格段に向上してきたのです。あと数年も経てば、コーヒーと喉頭がん、肺がん、すい臓がんの関係は、ずっと精度を高めてくると思われます。


(第246話 完)


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