シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒー豆を絞って作るコーヒーオイル(写真下)と、蒸留して作るコーヒーエッセンシャルオイル(同上)、揃って日本市場にもお目見えしそうです。オリーブオイルに比べれば知名度はありません。それもそのはず、コーヒーオイルはコレステロール値を高めて心血管病死の原因になりますし、エッセンシャルオイルにはレギュラーコーヒーに勝る魅力がほとんどありません。



 コーヒー製品を製造した後に残る大量の滓、コーヒー店で抽出後に残るこれもまた大量の滓、年々増える家庭のコーヒー滓、これらの総量は石油に次ぐ貿易量に達しているので、その20%を占めるオイルのリサイクルが可能となれば、世界経済への影響もバカになりません。


 以前からコーヒー滓の利活用について、コーヒー好きの個人レベルでも試行錯誤されていました。冷蔵庫やトイレの匂い消し、花壇の肥料、スクラブ用の化粧品、燃料などの人気が高いようです。肥料や燃料に使えるわけは、滓に入っているオイルです。そのオイルを奇麗に抽出すれば、オイルそのものは燃料に、香りは化粧品に使えるはずです。


●コーヒーオイルの作り方


1. 圧搾法 生豆や滓に高圧を掛けてオイルを搾り取る。

2. 炭酸ガス超臨界抽出法 液化炭酸ガスで抽出し、炭酸ガスをガスとして取り除く。


 注意すべきは、原料が生の豆(生豆)かそれとも焙煎豆かで、成分が大いに異なることです。生豆のオイルはトリグリセリドなので、他の植物油と同じです。違うのはジテルペノイドを結合したグリセリドが混ざっていること。このジテルペノイドはカフェストールとカウェオールで、両方とも飲めばコレステロール値を高めます。さらに飲み続ければ、心血管病に罹るリスクが高まります(文献多数あり)。


 焙煎豆のオイルには、生豆オイル成分よりもずっと多いコーヒーアロマが含まれています。飲むのは危険ですが、香りを楽しむ価値はあります。


●コーヒーエッセンシャルオイルの作り方は水蒸気蒸留だけである。


 製品の中には「抽出法」と書いたものがありますが、これにはジテルペン・グリセリドが混入するので飲むことは危険です。水蒸気蒸留の製品にジテルペンは入っていません。もし混入しているとしても微量ですから問題ありません。


 生豆と焙煎豆の製品では香りが全く異なります。生豆の製品にコーヒーの香りはありませんが、焙煎豆の製品にはコーヒーアロマが濃縮されています。ケーキやクッキーの香り付けには焙煎豆の製品であることをよく見て買うことが大事です。


 さて、このように「コーヒーオイルもエッセンシャルオイルも原料と製造法の差によって全く異なる」ことを知っておく必要があります。コーヒーオイルと書いてあっても、よく見ると「オリーブオイルにコーヒーオイルを混ぜた製品」だったりします。米国製でこの程度ですから、それを原料に日本で更なる加工が施されれば、もう何が何だかわからないものになってしまいます。


 消費者の皆さんはご注意ください。


(第380話 完)


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