シリーズ『くすりになったコーヒー』


●コーヒーには抗酸化作用の強いポリフェノールが入っている。しかもその量は、あらゆる食品の中でも特に多い(詳しくは → こちら)。


 コーヒーブームのお蔭もあって、コーヒー・ポリフェノールの1つ、クロロゲン酸が有名になりました。TVでも普通に話されていますし、新聞や雑誌にも毎日のように出てきます。しかしそのほとんどが「意味不明、根拠薄弱」と言わざるを得ません。全日本コーヒー協会の記事ですら怪しいわけは、引用論文そのものに原因があるのです(委細は省略)。


●コーヒー豆の焙煎で、2ハゼ音が聞こえると、クロロゲン酸はないに等しくなっている。



 この図は、ロブスタ種(低品質で値段は安いがクロロゲン酸含量は多い)の生豆を焙煎したとき、クロロゲン酸の量を追跡測定したグラフです(NPO法人・HAB研究機構付属研究所提供;去る6月7日 日本コーヒー文化学会・サイエンス分科会で配布した資料)。1ハゼ音を過ぎたコーヒー豆の焙煎度は浅煎りですが、生豆のときの3分の1程度まで減っています。


 2ハゼ音が聞こえたら中煎、終われば深煎と呼ばれます。焙煎の熱に弱いクロロゲン酸ですから、もうほとんど残っていないのです。こんなコーヒーなのですが、それでも庶民のなかには「クロロゲン酸の抗酸化作用を期待して」コーヒーを飲む人が益々増えているのです。


●高品質のアラビカ種(クロロゲン酸含量はロブスタ種の半分程度)の場合には、図の赤線を下方に移動して見ます(データは省略)。


 さて皆さんはもうお気づきと思います。「焙煎コーヒーを1杯飲んでも、病気を予防するほどのクロロゲン酸の抗酸化作用は得られない」。TVで放送され、新聞・雑誌・単行本に書かれているクロロゲン酸の効き目ではありますが、それらは例外なしに「クロロゲン酸の薬理学」であって、「コーヒーとして飲むクロロゲン酸の話」ではないのです。でも、


●コーヒーの抗酸化作用はクロロゲン酸だけのものではない。


 びっくりした後ですから、今度は「ああそうだったのか!」と一安心してください。深煎りのコーヒー豆には、深煎りならではの抗酸化物質が入っているのです。このNMPという物質が示す抗酸化作用は、クロロゲン酸の抗酸化作用と1つになって、より強力な抗酸化力を生み出しています。


●コーヒー生豆のトリゴネリンという物質が、熱で壊れてNMPに変化する。


 これについてはまたいつか詳しくお話しすることといたします。


(第242話 完)


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