シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒーを淹れた後の「滓(かす)」。ほとんど廃棄物ではありますが、肥料にしようとか、燃料にしようとか、色んな使い道が考えられています。それはそれとして、ここではコーヒーノキの種から根っこまで、全身・全体を活用したいというお話です。


●捨てるところのないコーヒーノキになれば、コーヒー農家は恵まれる。


 私たちが飲んでいるコーヒーとは、コーヒーノキの果実1つに2つずつ入っている小さな豆(正しくは種子)のことです。昔エチオピアで羊飼いのカルディさんが食べていたのは、赤く熟してほのかに甘い果実でした。サクランボに似ているので「コーヒーチェリー」とも呼ばれますが、種子は捨てられていたのです。


 コーヒーチェリーから種子を抜いて、カラカラに乾燥したものは「ギシルコーヒー」と呼ぶ飲みものになりました。コーヒー産地のエチオピアとイエメンでは、シナモンやジンジャーなどを加えて、今でも好んで飲まれているそうです。コーヒーというよりハーブティーと言うほうが当たっています。日本では瑞浪市の待夢珈琲店が推奨販売しています(詳しくは → こちら)。



 さて、コーヒーノキの活用法は他にも色々あるようです。最近は、コーヒーノキの苗木を買ってベランダの鉢植えで楽しむ人が増えてきました。野山の新緑と同じように、ちょうど今頃がコーヒーノキの新緑が美しい季節です。茶の木の新緑とも似ていますが、茶の木より大きな若葉です。


 コーヒーの葉茶はクロロゲン酸に富んでいて、逆にカフェインは少な目だそうですから、コーヒーが強過ぎるという人には向いているかもしれません。コーヒーの場合、1日に5杯以上を飲むと循環器病のリスクが生じますが、葉茶ならたくさん飲んでも健康被害はなさそうです(詳しくは → こちら)。国産品も市場に出ていますよ(詳しくは → こちら)。


 さてさて、漢方薬では葉というよりも、幹や根が普通に使われています。特に樹皮にはポリフェノールが多いので、そのためだろうと思います。コーヒーノキではどうかと言いますと、記録はどこにもありません。あるのはタンポポとチコリの根です。タンポポもチコリもキク科ですから、アカネ科のコーヒーノキとは似ても似つかない植物です。それでも根を乾燥して焙煎すると、コーヒーとよく似た飲みものになるのだそうです。


 アカネ科の根は漢方薬にいくつかあります。一番有名なのはトコンの根で、吐根という生薬になっています。読んで字の如く「悪いものを食べたときの催吐薬」になるのです。染物にも使うアカネの根は茜草(せんそう)という生薬です。そんなわけですから、コーヒーノキの根も茎も乾して湯で煎じれば、見た目や味は漢方薬のようになるかもしれませんし、焙煎すればコーヒーのようになるかもしれません。


●一番大事なこととして、コーヒーノキの完全活用が実現すれば、コーヒー産地の貧しい農家に、本物のサスティナブルが来るのではないでしょうか。


 サスティナブル・コーヒー協会様には、コーヒーノキ完全活用を活動の目玉にして貰いたいものです。


●コーヒーノキを育てている方へ:根っこと茎を誰でも作れる飲みものに変えてください。美味し飲みものになったら、ネット公開して下さいね。


(第240話 完)


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