シリーズ『くすりになったコーヒー』


 昨年末のことでした。米国FDAが消費者宛に届けたX’マスプレゼントとは?


●警告書「カフェイン粉末で心臓死・消費者宛アドバイス」とは(詳しくは → こちら)。


 2014年5月に18歳の高校生が、6月には新婚ほやほやの24歳の青年が、健康目的で飲んだ「粉末カフェイン」が原因で死亡しました。以前からカフェイン入り飲料水、特にエナジー系と呼ばれるものの健康被害が報告されていましたが、少量のカフェインで死亡者が出たことに当局FDAは強い危機感を抱きました。


 FDAが注目したのは「粉末」というカフェインの形態です。錠剤でも溶液でもなく、粉末状のカフェインが死亡原因になったのです。コーヒーの健康ブームが、サプリメントとしてのカフェイン人気を高めた結果、それまでの錠剤とは違う粉末カフェインがネット販売されるようになりました。しかしそこには、薬剤師もびっくりの危険が潜んでいたのです。


 今回の警告に至ったやや詳しい経過について、FDA食品安全部門のディレクター、マイケル・ランダ氏が書いています(詳しくは → こちら)。


 同じく事件の経過について日本語の翻訳記事もあります(詳しくは → こちら)。


 更には事件の一連の経過を短くまとめた日本人記者の記事も参考になります(詳しくは → こちら)。



 FDA警告書の要点を抜粋します。


  1. ネット販売の粉末カフェインは、100%純粋なカフェインなので強く効く。
  2. 普通の家庭には、1回分200mgを正確に計量する秤はない。
  3. ティースプーン1杯は、レギュラーコーヒー25杯に相当する。
  4. ティースプーン1杯で、ドキドキと脈拍が乱れ、発作を起こして死亡する。
  5. 粉末カフェインは飲むべきではない。


●FDAは「粉末」に注目している。


 錠剤でもカプセルでもない「粉末」が死を招いたと判断したのです。粉末カフェインの効き目が早く、かつ強いことは確かですが、それよりも、「正確に測りとれない」ために、「飲み過ぎる」という非科学的な消費者の飲み方があるなどとは、誰も予想しなかったのです。でも薬理学者は次のように考えます。


●「カフェインはアドレナリンを増やして余分な脂肪を燃やす」という、ネットに氾濫している間違った考えが死を招く。


 昨年粉末カフェインを飲んで死亡した人は、健康のために飲んだカフェインが原因で命を落しました。悲劇を防ぐために精密天秤をもっていることは大事かも知れませんが、もっと大事なことは正しい知識を持つことでしょう。そんなことは無理だと諦めないで努力だけでもするべきです。


●今年から、消費者の判断力の裏をかくような新食品表示法が施行される。


 アベノミクスとやらの一環ではありますが、インチキが罷り通る世の中が栄えた例はありません。新しい法律に基づいた食品表示に疑問を感じたら、「居住地の消費者団体に問い合わせる」という手もあります。


 最後に、もう1つ。


●カフェインを飲むくらいなら、コーヒーを飲みなさい。


(第227話 完)


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