シリーズ『くすりになったコーヒー』


 日本のコーヒー文化にとって2014年(平成26年)は革命の年でした。切っ掛けは年頭のコンビニ・カップコーヒー。師走になっても人気上昇中です。回転寿司もカップ・コーヒーを始めました。缶コーヒー市場では、苦しいとはいえ製薬会社までが名乗りを上げて、コーヒー業界の右肩上がりに確かな兆しが見えました。


 古来より仏様とお茶文化をこよなく愛する日本人が、異教の飲みものを受け入れるとは、「お釈迦様でもご存じあるメエ〜」。大昔にエチオピアの山奥でカルディーさんが可愛がった羊たちもメエ〜メエ〜泣き叫んで、知らない国の市場拡大を喜んでいます。おっと、来年の干支は「羊」だよね・・・メエ〜〜。


 写真は、江戸後期の日本人にコーヒーの効能を説くドイツ人医師シーボルトさんです。



 昭和時代のコーヒー文化は喫茶店文化でした。今や「喫」がなくなって只の「茶店」になりましたが、コーヒー屋さんはどんなイメージ作りをするのでしょうか? 海の向こうからはブルーボトル社が日本市場を狙っているとの話もあります。


 ブルーボトルの追い上げに恐々とするスターバックスは、戦略的広告塔「TOKYOWISE」を立ち上げたみたいです。そこにはコーヒー専門店のイメージを塗り変えたいマーケット探しが見えてます。(詳しくは → こちら)。


 片やブルーボトルの方は、日本式コーヒーを前面に出す「お・も・て・な・し」狙いのようです。そんな米国の動きを見てか見かねてか、日本の茶店主たちが「ネルドリップ普及会」みたいなものを作っています。


●森光宗男と大坊勝次を中心に、廃れた茶店文化が再興するかも!?


 森光さんは「もともと日本の文化だったネルドリップを、今、また、日本の家庭に普及したい」と言ってます。大坊さんは40年近くネルで淹れた店を閉じて、森光さんと二人三脚しています。どういう方向へ再興するかわかりませんが、このお2人が淹れたコーヒーに、海外資本のコーヒー屋は勝てません。写真は、発展途上の「ネルドリップ普及会」の集い、参加者の表情にコーヒーの夢が詰まっています。



 では、森光・大坊が目指すネルドリップコーヒーを薬学的に解説します。


●ネルドリップコーヒーは、効き目の成分を多く含み、毒になる成分を排除している。


 ネルで淹れたコーヒーは旨いだけではありません。雑味と呼ばれる不味い成分や、コレステロール値を高くする成分を、滓とフィルターに残してくるのです。大事なことは、薬理学の有効成分は旨い成分でもあること。逆に滓とフィルターに残る不味い成分は効き目を損なうものたちです。森光・大坊のじれったくなるほどゆっくりな技には、「よいものを残し悪いものを捨てる」時間が詰まっているみたいです。


●コーヒーをゆっくり淹れる文化は、日本独特で、諸外国にはない。


 昔、長崎に住んだ医師シーボルトが、「200年もオランダと付き合った日本人が、コーヒーを飲まないのは超不思議」と言って、さらに「日本人こそコーヒーが薬になる民族なのだ」とも言ったそうです(写真上)。


 それから200年近くが過ぎた今、森光・大坊によって最も薬に近いコーヒーが出現したというわけです。筆者流に言うならば、


●新コーヒー文化とは、のろのろと長寿、そしてPPKの文化となる。


(第226話 完)


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