シリーズ『くすりになったコーヒー』
食生活の乱れ、運動不足、積もり積もって2型糖尿病になりました。でもそれで終わりではありません。糖分が多めの血液は身体のあちこちに不具合を起こします。太い血管と細い血管、何処も彼処も合併症を起こす危険地帯になっています。しかしもっと他にもあるのです。
●血液が流れていない目のレンズでも、糖尿病白内障は厄介である(詳しくは → こちら )。
白内障は目のレンズに濁りが生じて視野が暗くなり、治療しないと失明する病気です。レンズの濁りは誰でも年を取れば大なり小なり起こりますが、糖尿病の人に起こると進行が早く、失明のリスクが高まります。予防できるものなら予防したい・・・糖尿病患者なら皆がそう思っているでしょう。
糖尿病白内障の研究は予防が第一で、それには糖尿病そのものの治療が大切です。白内障をどうこうするというよりは、糖尿病を治療したり、例え治らなくても進行を遅らせることに効果があります。ですから糖尿病白内障の研究はほとんどないと言ってよいくらいなのです。そんな状況の中、2016年に「コーヒーが白内障を予防する」との論文が発表されました。
●コーヒーを飲んでいる人は白内障が原因の視覚障害になりにくい(詳しくは → こちら )。
図1のカフェイン源はそのほとんどがコーヒーなので、1日に300㎎ということは、コーヒーほぼ3杯に相当しています。実はこの杯数は、疫学研究で心臓病死リスクが最低値を示す数値で、それと同じ杯数でレンズの濁りを10%以下に抑えられるということは、予防法として高く評価できるはずです。
このデータを受けて、慶応大薬学部の田村教授がラットを使って実験しました(詳しくは → こちら )。教授がまず気づいたのは、「高脂肪食でメタボ化したラットの白内障予防には、生豆より焙煎豆がよい」ことでした。次に気づいたのは、白内障のレンズには抗酸化性のグルタチオンやビタミンC(VC)が減っていることでした。そこで最初に取った策は、焙煎すると増える抗酸化物質を探すことで、答えは表1のようになりました。候補に挙げていた4つの成分のうち、カフェインとピロカテコールがグルタチオンやVCの減少を抑えたのです。
実験の一部を図2に示します。縦軸はレンズ内のVCの濃度で、通常食で飼育したラットでは、水、コーヒー、カフェイン、ピロカテコール、そのどれを与えても変化はありませんでした。一方、高脂肪食でメタボ化したラットでは、水だけ飲ませていたラットのみVC濃度の低下が明確でしたが、コーヒー、カフェイン、ピロカテコールのどれもが同じように、ほぼ正常値に近い値でレンズの透明度を護っていました。
以上の結果を概念図で示します(図3)。この目がラットの目というよりもヒトの目に似ている訳は、図1に示したヒトの疫学研究で「コーヒーを飲む習慣が視力の低下を防ぐ」というデータがあったからです。
田村教授の論文には、VCの他にグルタチオンでも同じ結果が得られたと書かれています。VCと同じく、グルタチオンの抗酸化性がヒトのレンズの透明度を保つ要素の1つになっているのです。
●糖尿病になったら毎日深煎りコーヒーを飲んで目を護ろう。
(第377話 完)
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