シリーズ『くすりになったコーヒー』


 前回書いたように、コーヒー滓にはコレステロール値を高める作用があります。コーヒーは世界の飲みものですから、国や地域によっては体に悪い飲み方だってあるのです。


●トルコ式コーヒー:昨年12月、トルコ研究家でトルコ語通訳の細川直子さんがトルコ式コーヒー文化について日本コーヒー文化学会で講演しました。


 薄暗い会場で居眠りもせず聞いたのに、コーヒー滓を平気で飲んでしまうトルコ人の気持ちが伝わってきません。もっとも最近はペーパードリップで淹れる人が増えたらしいです。本当はトルコ人といえどもコーヒー滓など飲みたくないのです。


●北欧煮出コーヒー:北欧では伝統的な薬缶(やかん)で淹れる煮出コーヒーが、ペーパーフィルターに変わってきました。でも寒い土地のフィンランド人は、コーヒーにウオッカを混ぜて飲んでいます。それがどんなに体に悪くても、止められません。これも根づいた文化なのだと思いました(詳しくは → こちら)。


●フレンチプレス:フィルターが隙間だらけなのでしつこく滓が漏れてくる。使う道具のおしゃれ感が受けているようですが、粗挽き豆でも漏れてくる。何処かの会社のインスタントみたいに、三日月模様が楽しめる・・・なんて言っている場合ではありません。


 以上は、積極的にコーヒー滓を飲みたい人以外はご遠慮ください。第63話に紹介した表ですが、今回はずっと詳しく書いてみました。レッドゾーンは滓入りコーヒー専用です。滓入りコーヒーを1日2杯2週間ほど飲むことで、血中コレステロール値が1割ほど高くなります。ずっと飲み続ければ、心筋梗塞か脳卒中は免れません。



●イエローゾーンのエスプレッソやモッカにも、そこそこのCとKが入っている。


 エスプレッソやモッカは飲み過ぎなければ安全でしょうが、1日に5杯も6杯も飲むようですと、やはりコレステロール値が気になります。レッドゾーンほどではありませんが、イエローゾーンのコーヒーも滓を含んでいるということで、危険なコーヒーに分類できます。道具の改良が望まれます。


●安全なコーヒーとは「フィルターを通したコーヒー」である。


 薄いブルーと濃いブルーに区別できます。「滓が除ける」という点ではどちらもほぼ同じですが、CとKには滓とは別に「コーヒーオイル」という起源があります。薄いブルーゾーンのコーヒーには「コーヒーオイル」が混ざる危険性があるのです。「コーヒーオイル」を除けるのは濃いブルーゾーンのコーヒーで、綿(コットン)製か紙(ペーパー)製のフィルターを通したコーヒーです。


●綿または紙のフィルターは「コーヒーオイル」を吸着する。


 これはセルロースの特性です。綿フィルターにも色々あって、通が好むネルドリップも綿製フィルターを使います。中南米と東南アジアのコーヒー産地では、昔から「ソックコーヒー」が主流でした。(詳しくは → こちら )。


 綿で編んだ靴下(ソックス)の片足だけ(ソック)をフィルター代わりに使うという至って素朴な淹れ方が、健康のためには一番すぐれているらしい。


●最近目にする100円でお替りできるコーヒーに滓が入っていないわけ → 添加物だけで調合してあるので滓なんか入れていませんから・・・。


【追記】ネルドリップについては、日本独特の淹れ方なのでデータがありません。超ゆっくり点滴みたいにろ過するので、ろ過効率は最大だろうと思われます。安価で使い捨てのネルドリッパーがあれば、もっと普及すると思われます。


【文献】
2. J Roy Soc Med 1996;89:618-623.
4. Food Chem Toxicol 1997;35:547-554.
6. Nutr J 2011;10:48. doi: 10.1186/1475-2891-10-48.


(第214話 完)


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