シリーズ『くすりになったコーヒー』


●コーヒーを飲むと「むくみ」がとれるか?


 こんなこと思ったことないですか? 体に溜まった水分がカフェインの作用で排泄されるのではないか? しかし実際は、「むくみ」を予防する食べものとして、コーヒーを飲むのではなく、カリウムの多いウリ科の野菜を食べるように言われるのです(詳しくは → こちら)。


 塩分(ナトリウム)の摂り過ぎは、水分の排泄を減らして、体を「むくみやすい」体質に変えてしまいます。俗に「イオンバランスの悪い体質」になってしまいます。そんな「むくみ」にカリウムが良いわけは、水分と一緒にナトリウムを排泄してくれるからで、そういうナトリウム性利尿が「むくみ」をとってくれるのです。



利尿作用のあるカフェインを含んだコーヒーはどうでしょうか?


●「むくみ」にコーヒーは良くない。


 これが普通の見方です。お医者さんもそのように指導することが多いようです。何故でしょうか? 「むくみ」の原因が単純にイオンバランスだけならば、コーヒーを飲めば水分が排泄されそうですが、実際にはコーヒーの水分が出る程度に過ぎません。血液中にナトリウムが多ければ、それすらおぼつかなくなってしまいます。しかも恐ろしいことに、「むくみ」の原因はイオンバランス以外の、もっと深いところにもあるのです。そういう病気に対して、コーヒーが悪さをしないとは限りません。そこでお医者さんは、原因のはっきりしない「むくみ」に、コーヒーを飲まないように言うのです。


●むくみの原因は種々雑多である。


 特に、カフェインやコーヒーが害を及ぼすのは、心臓病、肝臓病、腎臓病が原因でむくんでいる場合です。こういう病気が原因でむくんでいる人がコーヒーを飲みますと、「むくみ」が取れるどころか、病気自体が悪くなる恐れがあるのです。


 その他にも、コーヒーが良くない「むくみ」の原因があります。まずは妊娠です。妊婦さんのコーヒー飲用は1日1杯までとなっていますから、仮にむくみが出たときに、それ以上のコーヒーを飲もうなどと思ってはいけません。


 次に、薬が原因でむくんでいる場合です。そういう薬の例を見てみましょう。


 第1に、非ステロイド性抗炎症薬のイブプロフェンやナプロキセン。第2は、血圧を下げるカルシウム拮抗薬。第3にはステロイド剤。そして第4には、糖尿病のピオグリダゾンというように、実にいろいろな薬に「むくみ」の副作用が書かれています。薬を飲み始めて、急な体重増加に気づいたら、「むくみ」に要注意というわけです。


 薬が原因の「むくみ」は滅多にあるものではないとはいえ、時に重大な副作用につながるので甘く見てはいけません。特に危険な場合とは、薬の副作用で心肝腎の重大疾患のどれかが出たという場合です。


 副作用による心不全、肝硬変、腎炎など、どれも「むくみ」につながります。軽い「むくみ」が重大副作用の兆しを知らせてくれるので、「むくみ」を自分で治そうなどと考えずに、早めに医者にかかったほうがよいのです。


 さて、色々書いてきましたが、コーヒーやカフェインが利尿作用をもつとはいえ、「むくみ」の原因は色々なので、原因がはっきりするまではコーヒーを飲まない方が無難です。仮に多少の効果が出るとしても、さらに危険な病気が潜んでいないとは限りません。


●「むくみ」に対するコーヒーの効果は、塩分の摂り過ぎが原因の「むくみ」のときだけ有効です。


(第204話 完)


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