シリーズ『くすりになったコーヒー』


●8020運動をご存知ですか?



 歯は大事だから、80歳になったときに自分の歯を20本は残しておこうということだそうです。ものを噛むには自分の歯が一番ですし、噛んで食べることが健康につながるので、若いうちの虫歯と歯周病の手当てが大事というわけです。


 でもそれだけではありません。特に慢性的に歯周病をもっている人は、IgA腎症、糖尿病、関節リウマチ、その他、一見歯とは関係ないと思える病気になってしまいます。逆に言えば、どんなに治療に専念しても治らなかった病気が、実はたまたま歯周病を治療したときついでに治ってしまった、という話がたくさんあるのです。


●「医者は口を診ない、歯医者は口しか診ない」


 ○○医科歯科大学がいいのかな・・・などと連想するような本が、今売れています(詳しくは → こちら)。


 歯周ポケットの辺りには、外敵を排除するため免疫細胞が集まっています。これが歯周病菌に反応して免疫反応を起こすのです。すると大量にできてくる抗体IgAが全身に回って、各所に炎症を起こすのです。歯周病を治さないと、そういう病気は決して治りません。



 さて、コーヒーは歯周病と関係しているでしょうか? もしそうだとしたら、コーヒーは歯周に良いのか悪いのか・・・あまり関係はないだろうとは思いますが、調べてみると論文が見つかりました。


 研究したのは、米国ボストン大学の歯医者さんで、昨年の歯周病専門誌に論文が載りました(詳しくは → こちら)。


●コーヒーを多く飲む男性ほど、歯周病になるリスクが低かった。


 残念ながら大きな差ではないのですが、コーヒーは歯周病の予防に関係しているようです。ただし、予防するといっても、その効果は強いとは言えず、言い換えれば、コーヒーを飲んでも飲まなくてもほとんど変わらないのですが、少なくともコーヒーが歯周病を悪くする証拠はない、ということです。


 歯茎から出血して歯医者へ行くと、「コーヒーは飲まない方がよい」と言われるかも知れません。その理由は、「コーヒーは酸性の飲みものだから」ということらしいのです。そんなとき、もしあなたがコーヒー好きならば、どうしたらよいでしょうか?


●コーヒー好きが歯周病に罹っても、コーヒーを止める必要はない。


 コーヒーの酸性は、歯周ポケットの歯肉を刺激するほど強いものではないからです。


(第202話 完)


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