シリーズ『くすりになったコーヒー』


(前回のつづき)


 さてさて、コーヒーのニコチン酸(VB3)とメチルピラジンがNADを増やすと言っても、実際に1杯のコーヒーを飲んでどれ程の効果があるのでしょうか?客観的に効き目を見積もるのは難しいので、先ずはコーヒーを飲んだ後で血中ニコチン酸に起こる変化を見ることにします。実験プロトコル(図1)をご覧ください(詳しくは → こちら)。



 コーヒーを飲む前2日間は、ニコチン酸(NA)もニコチン酸アミド(NAM)も含まない食事で過ごしました。3日目の朝に飲むコーヒーは、フルシティー程度の豆のようです。これを30グラム使って湯で淹れて、500ミリリットルにして飲んだそうです。その後は図1の矢印ごとに採尿し、2日半を過ごしたということです。



 飲んだコーヒーには4.28ミリグラムのニコチン酸と0.071ミリグラムのニコチン酸アミドが入っていました。この量はVB3として1日必要量のほぼ3分の1に相当しています。これら2つと代謝物の測定にはHPLC/MS法を採用し、図2のような全部で4つの化合物を測定しました。


 図3はニコチン酸の排泄動態で、飲んだ後に速やかに吸収されて、1時間で排泄ピークとなり、その後も速やかに排泄されて、半日でほぼ終わりました。ニコチン酸アミドもよく似た変化を示していました。



 これに対して、2つの代謝物の排泄量は10倍以上で、計算によると4つの化合物の合計で90%が吸収されて尿中に排泄されたことになります。つまり食べたニコチン酸の利用率は非常に良好ということです。


 では、コーヒーの香りに含まれる各種のメチルピラジンはどうでしょうか?これらの香りが体内に入ると、ピラジン酸に変わるのですが、一体どれだけの量を飲んでいるのか正確な計算はできません。1杯に1ミリグラムに満たない香り成分のうち10種類程度が寄与すると思われるからです(詳しくは → こちら )。


 未解明の部分は多々残ってはいますが、コーヒーを飲むとニコチン酸が体内に入り、NAD生合成のデ・ノボ経路の活性化に寄与することは明らかです。NADは全身の細胞でエネルギーを産生し、長寿遺伝子サーチュインを活性化し、いわば「元気の素」となって病気を予防し、三大死因病の死亡リスクを減らし、元気で長持ちのPPKを実現してくれると考えられるのです。


●やっぱりビタミンは凄い優れものなのだ。


(第375話 完)


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