シリーズ『くすりになったコーヒー』


 カフェインはカルシウムの排泄を速めるので、コーヒーを飲んでいると骨密度が減り、骨粗鬆症の原因を作り、骨折のリスクが増す・・・との心配があります。ですから骨密度が気になる人は、コーヒーを飲まない方がよい・・・のかも知れません。


 筆者は、コーヒー好きの人には「牛乳を入れて飲む」ように勧めてきましたが、100%大丈夫とは言い切れませんでした。ところが、昨年の7月、スエーデン・ウプサラにあるスエーデン国立食糧庁からの論文が、米国の疫学雑誌に掲載されました。


●コーヒーは、骨密度を減らすが、骨折との関係はまったくない(詳しくは→ こちら)。


 図をご覧ください。1日に飲むコーヒーの量と、背骨、大腿骨、および全身の平均骨密度との関係です。飲む量が増えると骨密度が下がることがよくわかります。



 コーヒーを毎日4杯以上飲む人の平均骨密度は、飲まない人に比べて1.8%の減、背骨での減り方が最も顕著で3.4%減になっています。(論文には書かれていませんが)頸椎や腰椎など、首が痛い、腰が痛いという人の割合が、コーヒーを多く飲む人にやや多いということになるのかも知れません。


 しかし、コーヒーが原因で骨折するかといいますと、そうとも限らないのです。コーヒーを飲む人の骨折リスクは、飲まない人と同じでした。要するに、図に示されている程度の骨密度の減少では、直ちに骨折することはないのです。あるいは、コーヒーを飲んで骨のカルシウムが少しだけ減ったとしても、コラーゲンなど骨の粘りに関係する物質に変化が起こっていないからかも知れません。


 ということですから、「コーヒーを飲むと骨が弱くなる」という心配はほとんどなさそうです。これまで何故心配していたのか、その理由はデータがなかったからなのです。それでも年齢とともに骨はもろくなりますから、牛乳など飲んでカルシウムを補給する・・・これまでどおりの気配りはした方がよいのです。念には念を入れてです。


●年をとって骨が気になってきたら、牛乳を入れたカフェオレにすればよい。


 少ない調査ではありますが、根拠を示してこう言えるようになりました。


【追記】ごくごく最近になって、コーヒーと腰部骨折リスクの関係が、メタ解析されました。コーヒーと腰部骨折リスクの間には、何の関係もないのだそうです(詳しくは→ こちら)。


(第195話 完)


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