シリーズ『くすりになったコーヒー』
筆者は若い頃に片頭痛に悩んでいました。痛くなったら薬は効かず、夜寝るまでヅキンヅキンが消えません。そのうち体が覚えてくれた予感に気づいて、「痛くなる前に薬を飲む」という癖(?)が身につきました。でも筆者が経験した片頭痛は、大した症状ではなかったようです。
もっとインパクトの強い片頭痛の話を、小田原市の開業医間中信也先生が書いています(詳しくは→ こちら)。
片頭痛は、頭の片側のこめかみのあたりが、ズキンズキンするひどい頭痛が特徴です。吐き気がして吐くこともあります。しかし片頭痛といっても、頭の両側が痛むことが4割もあります。片頭痛は「ズキンズキン」が特徴とされていますが、ひどくなると持続性の痛みとなりますし、ズキンズキンしないことも5割あります。片頭痛の頻度は、月に1〜2回が多いようですが、何カ月にもわたり連日続く慢性片頭痛のタイプも知られております。
更に片頭痛が起ってしまってからの応急処置について、間中先生のアドバイズには、コーヒーも入っているのです。
■片頭痛が起ってしまったら
1.暗い静かな部屋で横になる痛むところを冷やす。
2.血管が収縮して多少とも頭痛が楽になります。
3.睡眠をとる。片頭痛はひとねむりで楽になります。
4.コーヒー・緑茶を飲む。カフェインの作用によります。
5.発作が軽いうちに鎮痛薬(バファリンなど)を服用する。
6.その他(略)
間中先生は、しつこい片頭痛が起ってしまったとき、1杯のコーヒーの効き目について、ご自身の臨床経験からご存じなのだそうです。ただし、1杯で治まらないからといって、2杯も3杯も立て続けに飲んだりすると、治まるどころか逆に症状を悪化させてしまいます。
間中先生はご自身のHP「頭痛大学」にもっと詳しく解説しています(詳しくは → こちら)。
●カフェインは片頭痛によい
●カフェインは眠気・疲労感をとり、思考力や注意力が増します。
●17世紀、スイスのSamuel Andre Tissotは神経学の教科書でコーヒーを片頭痛の治療薬として薦めています。
●片頭痛患者が濃いコーヒーを飲むと頭痛が取れる経験をします。
●カフェインは、コーヒーとお茶にともに1カップ当たり50〜150mgがふくまれています。
●カフェインはドリンク剤などにも含まれています。
●「片頭痛がドリンク剤を飲むと楽になる」という方がいましたが、それはカフェインのせいです。
●片頭痛治療薬にはカフェインが配合されています。
●カフェインは脳血管を収縮させます。
●下記の研究によればカフェイン自体が強力な片頭痛治療効果があるということです(文献省略)。
しかし、片頭痛のカフェインには重大な問題があります。
●カフェインは程よく飲めば片頭痛に効くが、飲み過ぎると逆効果になる。
カフェインは、程よく飲んで効くのですが、過剰なカフェインは脳血管を収縮させず、逆に拡張させてしまいます。結果、頭はヅキンヅキンになるのです。市販の痛み止めにはカフェインが入っているので、1回飲んで効かないからと、何回も飲むと、カフェイン過剰になってしまいます。
頭痛薬を選ぶときは、出来れば単味のくすりを選んで飲む方が安心です。アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなど、カフェインなしを選びましょう。その上で、ドリンク剤などは避けたほうが無難です。
●過ぎたるは及ばざるが如し。
この格言はどんな薬にも当てはまります。過剰投与は必ず副作用につながるのです。カフェインも例外ではありません(図を参照)。
(第194話 完)
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