シリーズ『くすりになったコーヒー』


 今年も押し迫って、いよいよ咳の季節の到来です。昔から「咳には蜂蜜がよい」と言われてきましたように、風邪をひいたときの喉の違和感は、蜂蜜を舐めれば少しは和らぐのです。しかし、蜂蜜だけでは、蜂蜜メーカーが言うほどに効くことはありません。


●蜂蜜に、何かを入れると効く。


 蜂蜜に下ろしショウガを入れてみたり、梅干しで練り込んでみたり、色んなことが試されているようです。なかでも「蜂蜜+コーヒー」の組み合わせは、知る人ぞ知る組み合わせのようですが、医学的に証明されてはいませんでした。


 今年、「蜂蜜+コーヒー」の咳止め効果について、二重盲検比較臨床試験の結果が発表されました。


●風邪をこじらせた後の長引く咳には、ステロイド剤よりも「蜂蜜+コーヒー」が有効(詳しくは → こちら)。


【試験の方法と結果】呼吸器感染症(感冒、インフルエンザ、気管支炎など)の一応の治療が終わってから3週間が経過しても、咳が止まらなかった97名の患者(平均年齢4
0.1歳)について、3群に分けて二重盲検法で比較した。


1.「蜂蜜+コーヒー」群

2.「プレドニゾロン(抗炎症性ステロイド剤)」群

3.「グアイフェネシン(鎮咳去痰薬)」群


 3群とも同じジャム様ペーストに調製して、8時間ごとに1日3回飲んでもらった。試験前と試験開始後1週間を経過した時点で、咳スコアを測定し、各群の結果を比較した。


 下の表と図をご覧ください。「蜂蜜+コーヒー」の効果が断トツに優れていることがお解りいただけると思います。特に抗炎症性のステロイド剤(プレドニゾロン)に抵抗性の咳でも、「蜂蜜+コーヒー」という組み合わせで治ってしまうというのは驚きです。これが本当なら(多分本当)、製薬会社もびっくりですし、町のお医者さんだって青くなってしまいます。





 風邪をこじらせた後の咳は、長ければ数ヶ月は続きます(筆者もそうでした)。その間、鎮咳薬はもとより、ありとあらゆる方法を試してみるか、諦めてしまうかしかありません。寝がけに咳込むと寝られないとか、QOLはとことん下がってしまいます。お医者さんを変えてみても状況は同じです。処方されるのは効くはずでも効かない薬かその仲間達でしかありません。


 この論文が正しければ、これからのお医者さんは変ります。


●「薬も出しときますけど、蜂蜜入りコーヒーも飲んでください」・・・と言うようになるのです。


【蜂蜜+コーヒーの処方箋】


1.蜂蜜 500グラム

2.インスタントコーヒー 70グラム


 まずインスタントコーヒーをコップ1杯のお湯に入れてよくかき混ぜる。ほぼドロドロ状態になったら蜂蜜を加えてさらによくかき混ぜる。このとき温めてもよい。出来上がった約700グラムの「蜂蜜+コーヒー(HC)」は室温で暗所(暗い戸棚のなか)に保存する。


【蜂蜜+コーヒーの飲み方】


 1日に3回、大匙1杯のHC(20〜25グラム)をコップ1杯のぬるま湯(約200ミリリットル)に入れて良くとかし、できれば8時間おきに飲む。それが無理なら、朝昼晩としてもよい。ほぼ1週間で使い切るようにする。


 上記の論文に書いてあるインスタントコーヒーはネスカフェゴールドブレンド、蜂蜜はイラン産ですが、産地によって効き目に差が出るかも知れません。国産にも良いものがあるのではないでしょうか。


●レギュラーコーヒーに蜂蜜をとかして飲んでもよい。


 この場合は1杯のコーヒーに、大匙1杯の蜂蜜をとかして飲む。喫茶店では「蜂蜜はありますか?」と聞いてみるのもよいし、面倒でなければ、マイハニーの持ち歩きもありかも知れません。


(第192話 完)


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