シリーズ『くすりになったコーヒー』
日本人で便秘を解消したい人の数は、おおよそ500万人にも達するそうです。人それぞれに工夫して、何とか毎日気もちよく過ごしたいと願っているはずです。繊維質の食べもの、生薬製剤、漢方薬、緩下剤、呼吸法、その他・・・ありとあらゆる方法を試してみても、どうしても上手く行かないという人が大勢います。便秘が原因で予期せぬ大病を患う人さえいるのです。
お勧めするわけには行きませんが、コーヒー浣腸という怪しいものがあります。1950年、癌の治療法がほとんどなかった頃のニューヨークに、「腸内の異物を排除すれば癌は治る」と主張する医者がいました。コーヒー浣腸で癌を治療できると宣伝したのです。結果は、百害あって一利なし・・・だったのですが、驚いたことに「コーヒー浣腸は重症の便秘に良い」と変身して、浣腸用の器具などがネット販売されています。
●コーヒー浣腸の後で、傷ついた腸から病原菌が侵入し、ゼプシス(敗血症)を起こして死亡した例が複数ある(第129話を参照)。
だからコーヒー浣腸などやらない方がよいのです。それでも他によい方法がないというのでしたら、普通にコーヒーを飲んでいれば、ただそれだけで効くことがありますよ。
●コーヒーが大腸の蠕動運動を刺激するのは、深煎りコーヒーに多く含まれているNMPという成分の効きめである。
食べたものは、腸管の蠕動運動によって肛門に運ばれながら処理されて、最終的に糞便となって排泄されます。便秘とは、何らかの理由で、大腸の蠕動運動が弱くなった結果ですから、繊維質で水分を増やし、かつ蠕動運動を刺激してやれば、すぐに解消するはずです。コーヒーのNMPは、腸管平滑筋のムスカリンM3型受容体に結合して、蠕動運動を刺激するのです。
コーヒーには、NMPの他にも、M3受容体を刺激するものがあります。浅煎りコーヒーに多いクロロゲン酸です。
●蠕動運動を刺激するコーヒーの成分とは、NMP(深煎り)とクロロゲン酸(浅煎り)の2つである。
この2つを同時に含むコーヒーを作るには、浅煎りと深煎りの2種類の豆を混ぜればよいのです。便秘対策にも「成分ブレンド」が有用であると言えるのです。しかし、
●成分ブレンドコーヒーが、便秘に試されたことはない。
試してみようという方がおられたら、ワルツ社の成分ブレンド「爽・快」をお試しください(詳しくは → こちら)。
開発当初のものと比べると包装用紙が変わっていますが、中味はしっかり2つの成分を含んでいます。
(第187話 完)
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栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』
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