シリーズ『くすりになったコーヒー』
「やる気」がなければ何をやっても上手く行かない。昔も今も変わらない人生の大きな課題です。
●人はどうすれば「やる気」になれるか?
ちょっと古くなりましたが、茂木健一郎氏がNHK番組「仕事の流儀」で語っていたのは「集中力」でした(詳しくは → こちら)。
「やる気」と「集中力」の似ている点は、どちらも「やりながら身につける」ということで、方法は1つしかありません。
●「やる気」や「集中力」は、まずやってみなければ身につかない(例えば → こちら)。
受験勉強でも仕事でも、まず始めることが大事なのです。「やる気」とは、やり始めると徐々にエンジンがかかるものなのです。何故なら、「やる気」の中枢である「腹側被蓋野と側坐核」の働きそのものが、そういう具合にできているのです(図を参照)。
その日の勉強や仕事を、「昨日の復習から始める」とか、「簡単な仕事から始める」ことには意味があります。その日の最初の小さな成果が、上手くできた、良かった、嬉しい・・・からスタートすれば、「もっと続けていたい」という意欲につながって行くのです。これは「やる気」の中枢を前向きに設定するドーパミンの効き目です。面白いと感じ始めたらもうしめたものです。コーヒーを飲めば効果は一層高まります。
●側坐核に密集しているアデノシン受容体にカフェインが結合すると、眠気や疲労感が飛んでゆく(詳しくは → こちら)。
まず目が覚めると言いますか、疲労物質アデノシンに代わってカフェインが結合すると、寝ぼけている脳に「やる気」の準備が整います。お断りしておきますが、側坐核は昔から知られている睡眠中枢ではありません。側坐核のカフェインに対する反応は、寝たり起きたりだけでなく、起きているときの「やる気」の向上にあるのです。
●腹側被蓋野と側坐核は「やる気」と「学習能力」の中枢で、ドーパミン回路とGABA回路でつながっている(詳しくは → こちら)。
側坐核にカフェインが作用すると、ドーパミン回路が増幅されて「やる気」が増してくるのです(図の赤い矢印)。一方GABA回路は側坐核の抑制神経を抑制するので、相対的にドーパミン回路を強めます。こうして学習能力の向上は達成感とか喜びにつながる成果を生んで、益々「やる気」になるのです。
ちょっと難しかったでしょうか?理屈は兎も角、「やる気」は自分で起こすしかないと思われていた脳の働きを、コーヒーのカフェインが刺激するなんて、こんな有難い話は滅多にありません。
●コーヒーパワーは、脳のトレーニングにとって欠かせない存在になるでしょう。
脳トレーニングは若いときには学習能力の向上、年を取ってからはアルツハイマー病予防に欠かせない医療技術になりつつあります。コーヒーの効き目が強い味方になるはずです。
最後にもう1度繰り返します。
●腹側被蓋野と側坐核の神経回路を活性化するには、まずは勉強や仕事を始めることが大事であるが、その前にカフェインたっぷりのコーヒーを飲むことで、成果は数倍に向上する。
(第179話 完)
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