シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒーとうつ病と自殺には関係があるらしいことを書きました(第65話を参照)。1998年(平成10年)に年間自殺者数が3万人を超え、2011年まで続きました。今は多少減ってきたようですが、それでも毎年3万人近い人が自殺しています。肝臓がんと同じぐらいの死亡者数です。


 自殺の原因の内訳を見てみましょう。2012年度の実数で主な原因を図にしてみました(出典:朝日新聞電子版)。



 自殺者の半数以上の人が「健康問題」を苦にしていました。家計が苦しいとか、家庭に不和があるという理由も多いのですが、「健康問題」が断トツの1位です。ですから、病気を予防できれば、自殺者の数は理論上半分に減るはずです。


●コーヒーは病気を予防する飲みものなので、自殺の予防にも寄与するはずである。


 この仮説は筆者の考えによるものですが、ここ数年でコーヒーの疫学研究が急速に進んだことで、仮説の信憑性は益々高まったと思われます。そして遂に去る7月2日、この仮説が間違っていないことが、ハーバード大学の疫学調査で明らかになりました(詳しくは → こちら)。



 図2をご覧ください。コーヒーを1日に2杯以上飲む集団の自殺リスクは、ほとんど飲まない集団の半分に減っています。ここで半分という数値は、図1で健康問題を苦に自殺した人数の割合と同じです。しかし、コーヒーの病気予防効果がそんなに強いはずはありません。ですから実際には、「コーヒーを飲む」ことには、病気を予防する以外に、人生を前向きに思考させる何か不思議な力があるに違いないのです。


 それでは次回は、コーヒーが持っているその不思議な力に迫ります。


(第178話 完)


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