シリーズ『くすりになったコーヒー』


 今回はコーヒーそのもののお話ではなく、コーヒー豆に似ているからと命名された病気の症状のお話です。では始めます。

 

 その名はCoffee-Bean Sign (CBS:コーヒー豆症候)と呼ばれていますが、何じゃそれはと問う前に、一目写真を見ればすぐに了解。ではその写真をご覧ください。



「えっ!お腹の中にコーヒー豆?」。しかも見たことない大きさ。センターカットの向きはマチマチだが、実物との見分けがつかないほどよく似ています。何でこんなものがあるんでしょうか?・・・と聞く前に、そのセンターカットの角度によって、すぐに手術が必要かどうか、外科医にとって重要な判断につながるのだそうです(詳しくは → こちら )。


●分度器が示す角度がaからcと大きくなると、AからCへと重症度も増して、水平に近づくとオペの準備が始まるのだ。


 さて、CBSは大腸のS字結腸と呼ばれる部分で起こります。何故かと言いますと、この部分の腸管が腹膜に固定されていないために、何かのはずみにクルっと回転して、腸管軸捻転を起こし易くなっているとのことです。図2を見るとよくわかります(詳しくは → こちら :サイト検索に「腸管軸捻転」と入れてクリック)。


 さてさて、東大病院の医師グループが分度器診断法を編み出した経過はと言いますと、訳があるのです。病因で腸管軸捻転はX線写真で大略診断できても、壊死の有無を見分けて、手術の必要性を正確に判断することは難しいのです。そこで東大病院では、過去の66症例のカルテを精査した結果、図1のようなX線画像に見られたCBSの軸角度とその後の臨床経過の間に「重症度に応じた角度」があることに気づいたのです。


●X線画像と分度器で巨大コーヒー豆のセンターカットの角度を知れば、治療法選択の意思決定が容易になる。


 それにしましても、こんなに大きなコーヒー豆を見たのは初めてです。


(第373話 完)


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