シリーズ『くすりになったコーヒー』


 メタボの基準と言われる体格指数BMI(Body Mass Index)は30歳前後で20がほどよい数値だと言われています。しかし、どうやらそれは30歳前後の話であって、人生の折り返し点を過ぎた人たちにとって、「痩せ」のリスクは心配の種かも知れません。そんな疑問を、疑問のままに議論している記事が、ネイチャー誌の論説蘭に載っていました。


●健康科学の話を簡単に白黒はっきりさせて説明するのは危険(Nature5月23日号)。


 この記事は、同じ号に載っている解説論文「巨大化した体脂肪の真実」を受けて書かれたものです。ネイチャー誌がこの解説論文を掲載した背景には、「標準BMIは加齢とともに増加する」というメタ解析論文(図を参照)が出たからです(詳しくは → こちら )。

  肥満が生活習慣病の原因であることは確かですが、「肥満は悪い」と言い切ることは、世のなかに誤解を招くと言うのです。でも誤解を招かないように説明するのは至難の業です。肥満の基準をどう決めるかという課題は、実は科学の問題ではないのです。


  科学はデータを出すだけであって、「だからどうしますか?」という肥満対策は政治の課題です。ですが厚労省はそういう政治の課題を独自に解決するシステムを持っていないので、諮問委員会と称する民間(省外)から選んだ人たちに投げてしまいます。BMI=20がよいとか、腹囲85センチ以上はメタボとか、色々決まりが作られましたが、何故かしっくりこないのは、決めるべき人達が決めていないからではないでしょうか。


  図をご覧ください。年齢別U字の底点は標準値を示します。二十歳で18.5のBMIが、30なら20、40なら22、50なら24、60なら25.5、そして70歳なら26が標準です。年齢が高くなると何故右へずれるのでしょうか?



  解説論文に書いてあるのは、「病気になって食べられなくなっても備蓄脂肪で補給されるから長生きする」とか、「備蓄のある人のほうが病気にならないから年を取っても生きている」とか、その辺の何処にでもいるおじさんたちの雑談的解説が書いてありました。


●デブと痩せとどっちが得かなどと言う議論には、結局専門家などは役に立たない。


 ということで年を取って太めの方、ご安心ください。だからといって太り過ぎは駄目ですよ・・・というようなネイチャー誌のツイットでした。


●「コーヒーが身体にいいか悪いか」なんて、そう簡単に言い切れません。


(第174話 完)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』
『医食同源のすすめ― 死ぬまで元気でいたいなら』
を購入は下部のバナーからどうぞ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・