シリーズ『くすりになったコーヒー』
メタ解析はないが、複数論文が「負の相関」を結論づけているので引用します。皮膚のシミは日本の消費者の気にするところなので、がんと対比して紹介してみます。
●毎日コーヒーを3杯以上飲む人は非メラノーマ性皮膚癌リスクが79%まで低下する(詳しくは → こちら )。
世界の人々の肌の色は、白、黄、黒の3色に別れます。黒は皮膚の色素メラニンが多いために黒であり、メラニンがほとんどないのが白であり、黄色はその中間です。驚いたことには、皮膚の色と皮膚がん発症率は関係しているのです。
●白人には皮膚がんが多く、黒人には少なく、黄色人種はその中間である。
白人に多い皮膚がんのうち最も悪性度が高いのはメラノーマ(悪性黒色腫)ですが、多いのは非メラノーマ皮膚がんです。皮膚にはメラニン色素を作る細胞があって、これががん化するとメラノーマ(悪性黒色腫)で、転移すると命に係わります。
さて、これから夏に向って気になるのは日焼けでしょう。日焼けすると皮膚が痛んで、やがてシミになり、顔には皺もできてしまう。どうしたものかと悩むのは女性だけではありません。欧米の白色人種はがんの心配もあるのです。
そこで日焼け対策のクリームがよく売れています。北米ではカフェイン入りもあるそうです。何故かと思ったら、カフェインが紫外線で傷ついた皮膚細胞を跡を残さずに処理してくれるのだそうです。
●紫外線でDNAに傷がついた皮膚細胞は、傷が治るまで分裂しないで待っているのに、カフェインがあると急いで無理やり分裂して、そのため嬢細胞は不完全で小さく断片化して、周りの細胞に食べられて消える。
これがカフェイン入り日焼け止めクリームの効き目だそうです。カフェインは飲んでも効くそうで、紫外線を浴びる前にコーヒーを飲むと効くのだそうです。カフェインの効き目を一口で言えば、紫外線で傷ついた細胞を自殺に追い込むことで、痕跡を残さずというわけです。
さて次は、コーヒーを飲むとシミができないというお話です。コーヒーに本当にシミ予防の効果があるとして、カフェインで説明するのはやや困難です。お茶の水大学でコーヒーがシミを予防すると言っている近藤先生は、その理由を知りたくなって、神戸にある再生未來クリニックの市橋先生に、なんとか説明できないものかと頼んだそうです。市橋先生は実験結果を去る5月に開かれた皮膚科学国際学会で発表しました。
市橋先生の実験は試験管のなかで行われました。実験に使った細胞は2種類で、1つはメラニン色素を合成するメラニン細胞、もう1つは皮膚のシミや皺の原因となるケラチン細胞です。2つを組み合わせて実験する(共培養)技術はイタリアで開発されたものです。
●メラニン細胞が紫外線を浴びて作りだす「メラニン入り小袋」をケラチン細胞が受け取って、やがて死んで角質化すると皮膚のシミとなって残るらしい(図を参照:花王サイトより → こちら )。
●ここにクロロゲン酸を入れておくと、メラニン細胞からケラチン細胞へのメラニン入り小袋の受け渡しが起こらない。
ここでちょっとだけ疑問が湧きました。クロロゲン酸が作用したメラニン細胞は、メラニン小袋を自分で持ったまま、それからどうなるのでしょうか?着色したまま生き続けるのでしょうか?シミの原因になることはないのでしょうか?
もう1つの疑問です。
●「紫外線を浴びてもシミができない」ようにした場合、皮膚がんの発症リスクにはどんな影響があるのでしょうか?または、ないのでしょうか?
皮膚から毛がなくなった人類が、「紫外線を浴びるとメラニン色素を作る」ことで発がんを予防しているとしたら、シミ除けは発がんリスクを背負うことにならないのでしょうか?欧米人にとって、日焼け防止にクロロゲン酸を使うことは、がんのリスクを高める結果にならなければ幸いです。
●カフェインとクロロゲン酸の併用が、もしかしたらシミと発がんを両方とも予防するかもしれない。
皮膚科学研究者の方、試してみてはいかがですか?
(第173話 完)
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