シリーズ『くすりになったコーヒー』
●コーヒーは血中尿酸値を下げて痛風を予防する(詳しくは → こちら )。
痛風の発作を抑えることは無理ですが、尿酸値を下げる効果は確実なので、尿酸値が高めの人はコーヒーを飲むように心がけたらよいのです。
健康診断で指摘されて毎日くすりを飲んでいる人は、コーヒーを飲む習慣を身につけると、薬の効き目がよくなります。ただし、がぶがぶと飲み過ぎますと、カフェイン代謝物(1-メチルキサンチン)が腎結石につながった例がありますから、それはどうかと思います(詳しくは → こちら )。
●くすりで尿酸値を下げ過ぎると心血管病のリスクが上がる(詳しくは → こちら )。
下図をご覧ください。血中尿酸値と心血管病リスクの関係です。カーブがJ字型であることに要注意です。心血管病のリスクを下げるために飲んだ薬が効き過ぎて、逆にリスクが高まるのです。ですから血中尿酸値はほどよくコントロールしなければ、元の木阿弥ですよ。
コーヒーが尿酸値を下げるわけは、コーヒー成分のクロロゲン酸が尿酸産生酵素を阻害するからです。ところが酵素を使って実験してみますと、クロロゲン酸の効き目はそれほど強くはありません。何か他の成分が効いている可能性がありそうです。
●コーヒーは、血中尿酸の腸管排泄を促進している?
これはまだ仮説の段階ですが、尿酸パラドックスを解く鍵になるかもしれません。尿酸は100%腎臓で排泄されると考えられてきましたが、東京薬大の市田教授らによって腸管排泄が発見されました。腸管の尿酸ゲートはABCG2という、なんと乳癌と関係したゲートです(詳しくは → こちら )。
そこで、コーヒーと乳癌について調べてみました。すると、慶応大薬学部の田村悦臣教授らが、コーヒーがABCG2の活性を高めることを論文発表していました(詳しくは → こちら )。
●コーヒーを飲むと、腸管壁の尿酸ゲートが活性化されて、腎外尿酸排泄が促進される。
この2つの論文は両方ともまだ最近の話です。お二人の研究者の論文にこんな繋がりがあろうとは、「お釈迦様でもご存じあるまい」といった所でしょうか!
本当に「コーヒーの医学は始まったばかり」なのです。
(第172話 完)
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栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』
『医食同源のすすめ― 死ぬまで元気でいたいなら』
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