シリーズ『くすりになったコーヒー』


 2004年、「コーヒーを飲んでいる人は糖尿病になり難い」という驚きの論文が、医学誌ランセットに載りました。書いたのはファン・ダム教授でしたが、それを読んだ世界各地の疫学研究者から、「わが国の調査結果も同じです!」とのコメントが殺到し、それも印刷公表されました。思うに、それまで「まさか?!」と疑ってためらっていた研究者たちが、ファン・ダム教授の勇気ある論文に刺激されて、我も我もと発表し始めたのです。


●コーヒーを飲まない人よりも、コーヒーを飲む人のほうが糖尿病罹患率が低い。


 理由は何故だか分らなかったのですが、この論文が切っ掛けとなって、コーヒー成分の研究も盛んになりました。筆者もその一人で、還暦を過ぎてからコーヒーの焙煎と成分の関係を研究してきたというわけです(詳しくは → こちら )。


 さて、コーヒーと糖尿病のメタ解析は、2009年になってようやく発表されました。それまでも総説論文は色々あったのですが、やや手のかかるメタ解析が遅れた原因としては、「コーヒーによる糖尿病のリスク軽減」を否定する論文がなかったためと思われます。コーヒーの効き目は強くはありませんが、確かであるとの印象が強いのです。


 メタ解析論文から引用した図をご覧ください(詳しくは → こちら )。



●コーヒーを1日に3杯以上飲むと2型糖尿病に罹るリスクが下がる。


 ほぼ46万人の調査によって解った結論は、コーヒーでも、デカフェコーヒーでも、あるいは緑茶でも2型糖尿病のリスクは下がるということです。コーヒーならデカフェタイプでも下がるということは、カフェイン以外の成分が働いているということです。一方で、緑茶でも下がるということは、カフェインが効いているということなので、何故リスクが下がるかという薬理学は、恐らく非常に複雑なはずです。


 ところで、上記のメタ解析論文では解らないのですが、男性と女性を比べてみますと、女性の効き目の方が強く出ることも解ります。幾つかの原著論文がありますが、ここでは国内のデータとして、国立がん研究センターのデータを引用してみます。図2をご覧ください(詳しくは → こちら )。



 男女とも統計学的に有意なリスク軽減が見られていますが、比較してみますと、女性の方が明らかに効果が見てとれます。図1の男女混合のリスク軽減効果とは、実は男性と女性の平均値に相当しているようです。


●コーヒーの2型糖尿病リスクの軽減は、女性においてより強く現われる。


 何故そうなるのか、残念ながら理由はよく解りません。女性ホルモンの影響か、体脂肪の種類によるのか、今後に残された薬理学の疑問が解かれる日が近いことを期待したいと思います。


(第167話 完)


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