シリーズ『くすりになったコーヒー』


 まず下の図をご覧になって、口腔と咽頭の位置を確認して下さい(点線で囲んだヶ所)。鼻、口、喉の構造は複雑で、素人にはなかなか理解が難しい所です。


●口腔と咽頭は食べものが通る道。



 まぎらわしいのが喉頭で、ここは空気の通り道です。喉頭は気管へつながり、咽頭は食道につながっています。食道へ行くはずの食べものが、間違って喉頭に入ると「誤嚥」となり、窒息すれば死ぬことがありますし、感染すれば肺炎になってしまいます。


●コーヒーを1日に4〜5杯以上飲んでいると咽頭・喉頭癌になるリスクが64%まで下がる(詳しくは → こちら )。


 このメタ解析論文はミラノ大学で疫学研究を指揮しているタバニ教授のグループが2011年に発表したものです。図2をご覧ください。



 この図で相対リスクの計算は、コーヒーを多めに(1日4〜5杯以上)飲んでいる人と、ほとんど飲まない人を比較したものです。日本人のデータを見てみますと、2008年に発表されたコホート研究で、相対リスク0.35まで軽減されていますが、これはちょっと下がり過ぎかもしれませんし、日本人は欧米人に比べてコーヒーが(口腔・咽頭癌に)よく効く人種なのかも知れません。


 ついでに書きますと、食道癌については未だ研究例が少ないので、確かなことは言えませんが、食道扁平上皮癌の場合は23%のリスク低下、食道腺癌の場合は、更に研究例は少ないのですが、18%のリスク増加が認められています。発癌の部位によってリスクが異なるということですが、まだ断言はできません。疫学研究では、症例の少ない癌の確かなデータはなかなか得にくいものなのです。


(第166話 完)


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