シリーズ『くすりになったコーヒー』


 食後血糖値の上昇は誰にでもありますが、一旦上昇した血糖値が直ぐに下がり始めて、4時間ほどの間に50㎎/dL前後(正常値は100前後)まで急降下してしまったら、反応性低血糖の疑いが強まります。甘いものを食べた時にも同じことが起こると、甘いものを食べるのが怖くなってしまいます。実際に、そんな経験をした人も居るようですし、筆者の知り合いにも結構います。論文が少ないので、読売新聞のネット投稿記事を紹介します(詳しくは → こちら )。


 コーヒーに砂糖を入れて飲むと数時間後に低血糖が起こり嫌な気分になることがあります。これも反応性低血糖です。そのため、「自分にはコーヒーが合わない」と信じ込んで、二度とコーヒーを飲まなくなってしまいます。でもそれは間違いで、悪いのはコーヒーではなくて砂糖なのです。砂糖や炭水化物を減らした食習慣に慣れることで反応性低血糖を防ぐことはさほど難しいことではありません。そのためか、医者にかからずに済ませている人も多いようです。図に描いて説明しましょう。




 医学的に「反応性低血糖」は降圧薬の利き過ぎによる低血糖とは区別して名づけられました。何が反応性かと言いますと、食後または砂糖入りコーヒーを飲んだ後に上昇し始める血糖値に、膵ベータ細胞が異常に早く反応してインスリンの分泌が始まってしまうのです。大きな上向き矢印は異常な高値を示しています。そのため上がりかけた血糖値が、今度は急速に低下し始めて、異常な低値を示すようになるのです。こんな風に血糖値が激しく上下することを血糖値スパイクとも呼んでいて、治療薬があるわけではなく、食生活習慣を自己流に管理する以外に良い方法はありません。


 血糖値の異常な低値は体に種々の変化を起こします。空腹感、脱力感、震え、眠気、冷や汗、立ちくらみ、不安感などに襲われるのです。すると今度は恒常性維持のメカニズムが働いて、副腎髄質からアドレナリンが分泌されて、それが血糖値を押し上げることで、正常値を取り戻すという訳です。


 仮に内科医を訪問して診察を受けたとしても、上記以外の検査値には一切の異常が認められません。神経、ホルモン、代謝機能、どれを調べても異常なしの原因不明。食事との因果関係を調べても、食事をした、ご飯を多く食べた、砂糖を入れてコーヒーを飲んだ、など以外に特別の原因らしきものは見つかりません。ではどのように対処したらよいでしょうか?


●米国Mayo Clinic(米国で最も人気のある総合病院)のホームページに、患者向け解説文(英文)が載っています(詳しくは → こちら )。


 ここに書いてある食事に関する要点は次の通りです。


1.炭水化物を摂り過ぎない。
2.甘いものを摂ない
3.1食の量を減らして回数を増やす。
4.3時間おきぐらいにスナック(ごくごく軽食)を食べる。
5.繊維質を多めに摂る。
6.コーヒーはブラックで飲む。


 如何でしょうか?対応を間違えると糖尿病にもつながりかねない反応性低血糖ですから、もし体験したら適切な食生活を心がけるのが一番です。


(第372話 完)


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