シリーズ『くすりになったコーヒー』
3月1日、第29回高峰カンファレンスに参加して、アルツハイマー病の最先端科学を聞いてきました詳しくは → こちら )。
岩坪威東大教授は、日本のアルツハイマー病研究の第一人者です。他の3名もそれぞれアルツハイマー病の疫学、画像診断、創薬のトップ研究者ですから、コーヒーを飲んでアルツハイマー病を“楽しく”予防しようという筆者にとって、「医食同源と先進医療の接点」を知る良い機会になると期待したのです。会場は撮影不可でしたので、観客のいない写真しかなくてすみません。実際には座席は全部埋まっていました。講演を聞き終わって、筆者の期待は間違っていなかったと感じた次第です。
カンファレンスのスライドを真似て、アルツハイマー最先端と筆者の考えの関係を描いてみました。ご覧ください。
アルツハイマー病(以下、ADと略す)で認知症の症状が出たら「手遅れ」だそうです(図の上段を参照)。これは本当に恐ろしいことです。何故なら、AD認知症には、今考えられている「夢の新薬」の効き目はまったく出ないのです(図の上段右端・治験失敗)。そこで、もっと早い時期を選んで治験の再挑戦が準備中だそうです。
●ADの早期診断は「軽度認知機能障害(MCI)」の診断である(図の上段)。
簡単に言うなら、MCIとは「自分では感じなくても他人から見れば記憶障害がある」という症状のことだそうです。普通に暮らしている人ならこの段階で医者にかかろうとは思いません。定期健診で医者が気づくこともありません。もし見つかるとしたら、「同じ職場で働く社員のうわさ」ではないでしょうか。
「彼・彼女、この頃なにか変じゃないっ?」という会話から見つかる可能性があるのです。もう1つの可能性は、MCI発見を意識した職場の健康診断です。兎にも角にもMCIと診断されても、「夢の新薬」が効くかどうかはわかりません。何故ならこの時期の治験はまだ準備中だからです(図の上段)。
千葉にある放医研の樋口真人医師は、何の症状も出ていない人の脳の検査で、ほんの僅かな老人斑(脳にできる褐色斑)を見逃さないPET検査法を開発中だそうです(図の下段)。東大の富田泰輔助教授によれば、こういう技術が開発されれば、無症状でもPETで老人斑が見つかった人に、「夢の新薬」を使う「先制医療(図の?)」の可能性があるのだそうです。「夢の新薬」を病気を治すのではなく、防ぐために使うのです。
こういう状況ですから、AD治療法の開発は、漢方の「未病の治療(図の?」によく似ています詳しくは → こちら )。
未病とは、健康と病気の間にあって、自覚できない病気の症状が進んでいる段階のことです。ADに当てはめれば、図の上段の「検出不可能な認知力の変化」が起こっている段階にぴったり当てはまっているのです。
さて、「先制医療」、「未病の治療」とくれば、次は「医食同源」に違いありません。図にコーヒーを書き込むとその差がはっきり解ります。疫学研究でADリスクを65%まで下げるというコーヒーは、図上段の左端に位置づけられるのではないでしょうか?
●ADの先制医療は漢方の未病の治療、コーヒーはもっと早くから始まる医食同源の飲みものである。
ということで、医薬品とコーヒーの距離は、益々縮まってきたようです。
(第164話 完)
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