シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒーと膵臓癌の関係について、2011年と12年に2つのメタ解析論文が出ています。しかし、何故か結果が違っているのです。


●上海華東大学附属病院の医師らは、コーヒーを飲んでいると膵臓癌リスクが僅かに下がると結論した。詳しくは → こちら )。


●ミラノ大学のタワニ教授が率いる国際チームは、コーヒーを飲んでいると膵臓癌リスクが僅かに上昇すると結論した詳しくは → こちら )。


 何故両者の結論は違っているのでしょうか?筆者の想像では、両者がデータベースを活用して世界中から集めた論文リストは基本的に同じですが、更なる選択基準に違いがあるのです。「元が違うので結果も違う」というわけです。と言うことは、「メタ解析の結論はまだ出ていない」と言わざるを得ません。


 ではありますが、次なる研究をただ待つのでは芸がありませんから、その間に日本人研究者の日本人データを見て、取り敢えずの参考にしたいと思います。


 国立がん研究センターで多目的コホート研究を指揮している津金昌一郎博士は、日本各地の保健所管内から集めた合計13万人の調査データを解析しています詳しくは → こちら )。


 コーヒーと膵臓癌に関する調査も行われて、その結果が論文になっています詳しくは → こちら )。


 図を引用して説明します。



●日本人男性では、1日3杯以上のコーヒーを飲んでいると、膵臓癌のリスクが0.6まで低下する(図左を参照)。


 青いグラフは、日本人男性が1日に飲むコーヒーの量と膵臓癌リスクの関係です。コーヒーの量が増えるにつれてリスクの低下が見られます。コーヒーをほとんど飲まない人のリスクを1.0とすれば、1日に2杯以上飲む人のリスクは0.6まで下がるのです。これが本当だとしたら、実に素晴らしいことです。一方日本人女性の場合、統計学的に意味のある結果は出ませんでした。赤のグラフを見ても、コーヒー摂取量とリスクの間に連続する関係はなく、ばらついて、統計学的有意差はありませんでした。


 このように、日本国内のデータにも「絶対に確か」という保証はまだありません。特に女性の場合は、国内国外の現状を見る限り、「膵臓癌に関する限り、コーヒーは良くも悪くもない」と考えても間違いではないと思います。


 ではコーヒーの代わりに緑茶はどうかといいますと、これもまた、良くも悪くもないのです詳しくは → こちら )。


 こういう訳ですから、膵臓癌の場合には、早期発見で治療に専念するしかないのです。ただし、お酒の飲み過ぎによる影響に限って言うならば、コーヒーで防げる可能性がありますよ。何せコーヒーはアルコールの毒消しですから、真の百薬の長なのです・・・詳しくは → こちら )。


(第163話 完)


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