シリーズ『くすりになったコーヒー』
「コーヒーと子宮体癌リスクのメタ解析」が米国産婦人科学会誌に載ったのは2009年のことでした。「コーヒーを飲むと子宮体癌リスクが減る」は魅力的でしたが、残念ながら因果関係が曖昧でした。それを解消したのは、ハーバード大グループが2012年に発表したメタ解析論文です。コーヒーと子宮体癌リスクの間に統計学的有意差が確認されて、「コーヒーが子宮体癌リスクを減らす」ことに、科学的根拠が生まれたのです。
●コーヒーを多く飲んでいる女性の子宮体癌発症リスクは、ほとんど飲まない女性に比べて明らかに低い(詳しくは → こちら )。
図を見て下さい。棒グラフは、疫学調査が行われた地域別集計結果です。日本では3つの調査が行われ、それらすべてを合わせて解析しますと、コーヒーを飲む日本女性の発癌リスクは飲まない日本女性より60%も低いのです。これは驚くべき数値です。
次に北米(アメリカとカナダの合同調査)を見てみましょう。全部で5つの調査結果のすべてを集計しますと、コーヒーを飲むことで相対リスクが69%まで下がっていました。同じくEU(欧州)での8論文の集計では79%でした。アジアと欧米のすべての調査でコーヒーの効果が確認されたのです。なかでも日本女性にとって、コーヒーは子宮体癌予防の特効薬とでも言えそうな存在です。
日本女性の子宮体癌年間死亡者数は、10万人当たりで2.5人程度です。この数値は、大腸癌30.8人(女性のみ)、肺癌28.8人(同じく)、胃癌26.7人(同じく)、膵臓癌19.7人(同じく)、乳癌18.5人などに比べればずっと少ないのですが、発見が遅れれば完治は期待できません。野菜や果物を多く摂るなどの予防策がPRされてはいるものの、コーヒーの効き目には適いません。でも実際の日常生活では、野菜も果物も食べて、そしてコーヒーを飲むのが一番ではないでしょうか。
子宮癌のなかでも子宮頸癌ならワクチンで予防できます。これに対して子宮体癌には食事療法以外の良い方法がありませんでした。日本では、国立がん研究センターの津金昌一郎博士の研究グループが、日本人のデータに基づいてコーヒー飲用をPRしています(詳しくは → こちら )。
では「どんなコーヒーが一番よいか?」について考えてみます。しかし、これにはまだ確かな答えがありません。カフェインが関わっていることは間違いないのですが、デカフェコーヒーにも効果があるので、カフェイン以外の成分も関わっているのです。津金博士のホームページも是非ご参照ください(詳しくは → こちら )。
(第159話 完)
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栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』
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