シリーズ『くすりになったコーヒー』


「コーヒーが肝臓病を減らす」という疫学調査結果が出た2005年正月、医学界に不思議な驚きが広がりました。その証拠に、2005年の国際消化器病学会誌の表紙は、コーヒー豆で埋め尽くされたのです(写真を参照)。人体の内も外もコーヒー豆だらけとなり、特に肝臓はハードローストのコーヒー色です。



 コーヒーを飲む習慣がアルコールの肝毒性を弱めたり、ウイルス性慢性肝炎の発癌を抑えたりする。この驚くべき発見が医学に影響を及ばさないわけはありません。そうしてコーヒーの疫学研究に拍車がかかりました。2匹目のドジョウを探し出して、世の中から癌を減らしたい。疫学研究家の士気が高まったのはごく自然の流れでした。今日は女性の卵巣癌について検証してみます。最初のメタ解析は2007年でした。


●コーヒーは卵巣癌の発癌リスクに影響しないが、お茶はリスクを下げる(詳しくは → こちら )。


 この論文はオランダ・マーストリヒ大学の研究グループのものですが、お茶が卵巣癌リスクを減らすと言われても、「1日に飲んだお茶の量が増えれば効果も増す」という薬理学的連続性が欠けています。ですから、いくらメタ解析で確かめたとは言え、直ぐに信じるわけには行きませんでした。


 案の定今年5月、2つ目のメタ解析論文が発表されました。筆者の心配が当たってしまいました。


●コーヒーもお茶も卵巣癌を増やすことも減らすこともない(詳しくは → こちら )。


 残念な結果ではありますが、オランダ、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパの多国籍研究チームが出した結論を疑うわけには行きません。卵巣癌に関しては2匹目のドジョウは居なかったのです。それでもがっかりすることはありません。「卵巣癌の発癌にコーヒーが関わっているかも知れない」という疑いが晴れました。研究結果は前向きに受け止めるべきなのです。


●コーヒーをいくら飲んでも卵巣癌になる心配はない。


 それでは良いお正月をお迎えください。来年もよろしくお願いします。


(第157話 完)


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