シリーズ『くすりになったコーヒー』
秋晴れの10月19日(金)、新横浜駅近くの呉竹鍼灸専門学校で第24回呉竹医学会学術大会が開かれました。鍼灸学校の先生方やこれから医療の一端を担う大勢の学生さんを相手に、初めて「珈琲一杯の薬理学」のお話をする機会をいただきました。
今やコーヒーの薬理学は、薬学生にとっても魅力ある内容になってきました。今回思い切って同じパワーポイントで話したのですが、立見席まで埋まった学園の大講堂は大入り満員、質問タイムに学生さんからの厳しい指摘もあって、思った以上に確かな反応がありました。校長先生はじめ皆様本当にお世話になりました。
写真左は開会を宣言する校長先生、右が筆者の講演風景です。普通の大学では新入生のほとんどが二十歳前であるのと違って、呉竹学園の新入生は20代半ばの年齢だそうです。言い換えますと一旦は社会に出て、自分と社会の関係を見つめ直して、その上で志を立てて入学するのだそうです。なるほど受講者の目が輝いていました。
今日はこんな命題を考えてみます。
●コーヒーを飲みながら鍼灸治療を受けたらどうなるだろうか?
コーヒーに含まれているカフェインは、他の治療薬の効果を高めます。例を上げれば、解熱薬、鎮痛薬、抗癌薬、マオウ、エフェドリン、アルコール、唐辛子、などです。市販の風邪薬にもカフェインが入っていて、効き目を強めています。治療薬とカフェインの間で、薬理学的相乗効果が働くのです。
●同じ薬効(熱さましとか、痛み止めということ)でも、作用点が異なる2つの薬物は、相乗効果を発揮する。
これは薬理学の原理です。痛み止めとカフェインを一緒に飲んで、痛み止め効果が高まるというからには、カフェインにも痛み止めの効果があるはずです。ではカフェインは痛み止めかといいますと、そんなことはありませんし、熱さましかといいますと、そういうこともないのです。そんなカフェインと鎮痛薬、解熱薬がなぜ相乗効果を出すのでしょうか?どうやらその答えは、まだ教科書に書かれていないカフェインの新しい効果「抗炎症作用」にあるようです。
●カフェインは抗炎症薬である(一例は → こちら )。
炎症はほとんどすべての病気の基礎にある基本的な病態です。抗炎症薬とは、炎症を抑えるくすりです。「あっ!炎症かも知れない?!」と思わせる四大自覚症状が特徴です。
●炎症の四大症状とは?
・痛み
・腫れ
・発熱
・発赤
このどれかを感じれば炎症の疑いがありますし、数が増えれば疑いが強くなります。鍼灸治療を受けようと思う人のなかには、くすりでは消えない痛みを抱えている人が大勢います。炎症が起こっているのです。そんなとき、カフェインを含むコーヒーを飲みながら、あるいは飲んでから治療を受けるか、または治療を終えてからコーヒーを飲むことで、治療効果が大いに向上する可能性がありそうです。
●痛みの鍼灸治療を受けるとき、カフェインの入っているコーヒーが相乗効果を生むかもしれない。
これは呉竹学園を訪問した後で、筆者が勝手に想像してみた仮説です。当たるも八卦、当たらぬも八卦、お試し下さい。
(第154話 完)
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