シリーズ『くすりになったコーヒー』


 食物繊維はカロリーをもたないし、必須栄養素でもないのに、「食べれば健康に良い」ことを誰もが認める食物成分です。ですから誰もが「食物繊維は栄養素である」と軽く思っているし、それが常識のようになっています。しかし本当の常識は思いがけない内容です。


●食物繊維は栄養素ではない。


 なぜ栄養素でないかと言いますと、仮に食物繊維を食べなくても、死ぬことはないからです。食物繊維を食べないと毎日死ぬほど腸の具合で苦しむことはありますが、決して死ぬことはないのです。ですから食物繊維のことを栄養素とは呼びません。栄養素とは、食べないと必ず病気になって、長く食べないと死んでしまう食物成分のことなのです。


 それでも、食物繊維を食べていますと、お腹の調子が整うだけでなく、生活習慣病になりにくいという調査結果は重要です。食物繊維には、何か不思議な健康パワーが備わっています。


●食物繊維は腸内菌の善玉・悪玉バランスを整えるので、健康に良い。


 そうです、食物繊維は腸内菌の餌となって、善玉を増やし、悪玉を減らす役目をしています。その結果、コレステロールや脂肪の吸収を抑え、生活習慣病を予防します。おまけに宿便をなくし、ダイエットにも効果的です。



●コーヒーには可溶性食物繊維が多く含まれている(表の赤字を参照)。


 一口に食物繊維と言っても、種類は非常に多くて複雑です。うまく整理した表があればと思って探してみましたが、残念ながらコーヒーは載っていません。今は未だ研究の真最中なのです。そこで先取りして上の表を作ってみました。コーヒーには他の食品にはない種類の可溶性食物繊維が沢山含まれていることがわかります。


 焙煎コーヒー豆10グラム(1杯分)を抽出すると、約0.5グラムの可溶性食物繊維が溶けてきます(詳しくは → こちら )。これがどのくらいのものなのか、文科省が公開している「食品成分データベース(詳しくは → こちら )」を使って比べてみました。焙煎コーヒー豆は「枝豆」とほぼ同じ量の食物繊維を含んでいます。可溶性食物繊維に限って比較しますと、枝豆の10倍も含まれています。大豆と比べても2倍以上です。


●コーヒーの食物繊維には、他の食品には見られない特徴がある(表の赤字を参照)。


 コーヒーは抽出して飲むものなので、コーヒー食物繊維は全て可溶性です。コーヒーの食物繊維はコーヒーだけにしかありません。そこで表を参照しながらコーヒーを中心に、コーヒーと果物、コーヒーと寒天、コーヒーとコンニャク等々、他の食物繊維との相乗効果を自分自身で試してみると、非常に効果的なことに気づきます。これは実に大事なことで、1つの食物繊維では効かなくても、組み合わせによって、大腸の蠕動運動が活発になり、毎日のQOLアップとメタボ解消に役立つのです。


●「よく効く食物繊維の組み合わせ」は人によって違っている。


 栄養素ではない食物繊維の効き目は、表の組み合わせから自分で探すのが一番です。


(第144話 完)


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