シリーズ『くすりになったコーヒー』
「コーヒーを飲むとトイレが近くなる」と言う人が居れば、
「いえ、私は紅茶を飲むと止まらない」とか・・・カフェインの効き目は、お茶かコーヒーか、一体どっちが強いのでしょうか・・・? とは言え人それぞれに癖があるでしょうから、もっと客観的に科学的に比べる方法を考えます。
●カフェインを含む飲料1杯分に含まれるカフェインの量
データを探してみましたら、文科省のホームページにありました。食品成分表です。それを整理してみたので、ご覧ください。
こうして見ますと、玉露のお茶とレギュラーコーヒーがカフェインを一番多く含んでいることがわかります。玉露とレギュラーコーヒーを比べますと、一見玉露の方が多そうですが、実はそうでもありません。レギュラーコーヒーのカフェイン含量にはかなり大きなバラツキがありますし、玉露のお茶にも多少のバラツキがあるからです。
紅茶のカフェイン含量は、お茶やコーヒーに比べると少な目です。それにも関わらず、紅茶を飲むとトイレを我慢できない人が居ます。実は筆者もその一人です。一体全体どうしてなのでしょうか?
確かな理由があるわけではないのですが、カフェインに慣れてしまいますと、大抵の人はトイレに行かずに済むようになるからではないでしょうか。この現象のことを、薬理学では「カフェイン耐性の獲得」と言って、コーヒーについてよく観察されています。しかし・・・、
●毎日コーヒーを飲む人が、たまに紅茶を飲むと、カフェインが効く。その逆の現象も起こる。
同じカフェインなのに、毎日飲んでいる飲みものによって、耐性のでき方が違っています。この現象については、まだ全くと言ってよいほど研究例がありません。ですから想像の域を出ないのですが、「毎日コーヒーを飲む人は、コーヒーのカフェインに耐性が生じるが、毎日紅茶を飲む人では、紅茶のカフェインに耐性が生じる」のだと思われます。その結果・・・
●滅多に飲まないカフェイン飲料を飲んだとき、「このカフェインが一番効く」という錯覚が生まれる。
カフェインの利尿作用がはっきり出るのは、滅多に飲まないカフェイン飲料を飲んだとき・・・と言えるのです。決して飲んだカフェインの量によるものではなさそうです。正に「慣れとは侮れないもの」なのです。
(第134話 完)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』
『医食同源のすすめ― 死ぬまで元気でいたいなら』
を購入は下部のバナーからどうぞ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『医食同源のすすめ』のすすめ
昔からの言い伝えを侮ってはいけない!
「1日30種類の食材を食べていれば病気にならない」…昔からの言い伝え
「必須栄養素をガッチリ食べてカロリー制限していれば健康寿命が延びる」…先端科学
どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。