シリーズ『くすりになったコーヒー』
コーヒー会社ではコーヒー滓(かす)が溜まり過ぎて困っているそうです。家庭でも「もったいないから何かに使えないものか?」と悩んでいる人が大勢いるのだそうです。すぐに思いつくのは家庭菜園や花壇の肥料にすることですが、上手くいったり失敗したり・・・使い方のコツがわかりません。
●コーヒー滓の成分特徴は、炭素/窒素≒20
この数値は油粕に比べてもやや高目で、よい堆肥になるのですが、リンとカリが少なくて、マグネシウムが多いのも特徴です。
ということで、少々畑に撒き過ぎても問題はなさそうですが・・・でも、
●浅煎りのコーヒー滓は酸性である。
ですから、酸性土壌を好む植物にとって、コーヒー滓はよい肥料になるのだそうです。キノコの床作りに混ぜると面白いかも知れません。逆に、アルカリ性を好む植物に、浅煎りコーヒー滓を撒き過ぎますと、何とも育ちが悪くなってしまうのだそうです。下の写真は、ビニール袋に入れたコーヒー滓を1年放っておいて、気がついたら大きなキノコが育っていたという話です(詳しくは → こちら )。
浜名湖に近い蜜柑産地では、県内のコーヒー会社からコーヒー滓を調達して、堆肥に混ぜて蜜柑畑に撒いているそうです。そんな畑でとれる浜名湖の蜜柑は「三ケ日蜜柑」といって、糖度が高く高値がつくということです。
家庭菜園ならイチゴのプランターの基肥に、コーヒー滓を敷き込むのがいいかも知れません。「コーヒー滓はナメクジを追い出すから良いのだ」という説がネットに氾濫していますが、これは結構怪しい話で、本当はアルカリ性土壌の改造と、マグネシウムの補充だろうと思われます。コーヒー滓が肥料効果を出すには時間がかかるので、土に混ぜて1年以上放置したものがいいようです。イチゴ作りが趣味の方、是非お試しください。
アメリカ発のネットの書き込みを見てみますと、コーヒー滓が威力を発揮する植物は、ブルーベリー、アザレア、ツツジ、シャクナゲなどで、栽培用の土として売られているとのことです。筆者の経験では、2年前から白梅の根回りにコーヒー滓を撒いておいたら、今年は花のつきが倍以上になりました。
(第131話 完)
追伸:さて2012年度も、コーヒーの医学・薬学を深読みしてまいります。
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2008 Vol.50, No.10 焙煎コーヒーが肝炎ウイルスの発癌を予防するメカニズム
2011 Vol.53, No. 5 アルツハイマー病を予防するコーヒーの薬理学
2011 Vol.53, No. 9 高血圧を予防するコーヒーの薬理学
2012 Vol.54, No. 1 痛風/高尿酸血症を予防するコーヒーの薬理学
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