シリーズ『くすりになったコーヒー』


 アメリカブナの葉からとれたプラントオパールは真ん丸な形の宝石のようですが、材質はシリカ(珪酸)なので、まあガラス玉と言ったところです。



 特にイネ科の植物の葉や茎にはプラントオパールが沢山あるそうです。そしてこの無機質の植物成分に放射性セシウムが吸着しているというのです。それを発見した千葉大学の片山栄作さんと群馬県で工務店を経営している川上勇さんは、除染の方法まで考え出しました。その新技術に、何とコーヒーフィルターが使われたのです。


 毎日新聞の記事から実験の中身を引用します。


【実験】福島県南相馬市で11月中旬、刈り取られた雑草570グラムを水分が蒸発しないよう密封。どろどろの液状に腐らせた後の12月10日に測定すると、1キロあたり2万8924ベクレルの放射性セシウムが計測された。これに水を加えてコーヒーフィルターでろ過すると、ろ過後の液体から放射能は検出されなかった。フィルターに残った“かす”を顕微鏡で観察すると、多数のプラントオパールが確認できた。セシウムがプラントオパールと化学的に結合し、フィルターに引っかかったとみられる。


 片山さんは、「本来なら論文にして発表するところですが、被災地のために実用化を優先します」と話しているそうです。そんなわけで相馬市の落ち葉から回収されたプラントオパールの写真は見られないので、古い文献に載っていた「森の土から回収したプラントオパール」を紹介します。米国イリノイ州の“出土品”は、球状ではなくて破片状です。



 さて、片山さんたちの方法が工業化されれば「落ち葉の除染」に使えるそうなので、それはそれで役に立つのですが、では、森の土のなかでプラントオパールにくっついている大量のセシウムはどうなるのでしょうか? 更なる研究が進んで、土壌の除染にも役立てて欲しいものです。


(第125話 完)


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