シリーズ『くすりになったコーヒー』
新年早々にややこしい話で恐縮ですが・・・、
●注意:活性水素、マイナス水素イオン、水素吸蔵サンゴ、水素吸蔵ゼオライトと記載されているものは、私の研究成果とは全く無関係です。消費者のかたは、注意しましょう。(詳しくは → こちら )。
自らのホームページでこう訴えるのは、日本医科大学の太田成男教授です。太田教授が2007年に発表した「分子状水素の抗酸化作用」が世界の注目を集めています。(詳しくは → こちら )。
●「分子状水素(以下、単に「水素」と呼ぶ)」は体内で「ヒドロキシラジカル」と反応して「水」になる(下図を参照)。
ヒドロキシラジカルは最悪の活性酸素で、脂質やタンパク質と反応して細胞を破壊します。体内の水素は、ヒドロキシラジカルを無害な水に変えて、抗酸化作用を示すのです。
水素は、一重項酸素、スーパーオキシド、過酸化水素と反応することはありません。ですから太田教授の考えでは、水素は細胞の老化や癌の発生を予防するだけでなく、細胞の正常な機能(例えば、免疫機能)を損なうことがないのです。
●水素は食品添加物・製造用剤として認められている。(詳しくは → こちら )。
水素を含む水を売ることは違法ではありません。コーヒーは?と言いますと・・・「水素カフェ」・・・何とコーヒーに水素ガスを注入して、抗酸化作用をPRしています。ただし、これが本当に効くかどうか、確かめられたわけではありません。
●殆ど知られていませんが、水素は私たちの身体のなかでも出来てくる。
小腸で消化しきれなかった糖分(例えば、牛乳の乳糖)が、大腸の腸内菌に食べられると、水素を出すのです。この水素は水に溶けて吸収され、全身を巡って肺に達し、呼気に混ざって排泄されます。そこで、呼気に含まれている水素の量を「呼気水素試験(HBT)」で測定して、腸の状態を調べるのです。
●植物成分の配糖体は、腸内菌に食べられて水素になるか?
専門家にとって、漢方薬の配糖体が腸内菌の餌になることは常識です。でも、そのとき水素が出るか否かについては、誰も調べたことがありません。十分に科学的に考えるならば、水素は発生するはずです。もしこの予測が当たっていれば、漢方薬でなくても、野菜や果物を食べさえすれば、血液中の水素濃度が上がるはずです。そんな論文を探してみたら・・・ありました。
●秋ウコン(ターメリック)入りカレーを食べると、呼気水素試験が陽性になる。(詳しくは → こちら )。
ではコーヒーを飲んだときはどうでしょうか?残念ながらコーヒーの呼気水素試験を正確に書いた論文はありません。その代り解っていることは、「血液の抗酸化力が亢進する」ということです。(詳しくは → こちら )。
常識的には「血中ポリフェノールが増えたから」と考えるべきでしょうが、もしかしたら「血中水素が増えたから」かも知れません。いや多分その両方だろうと思われます。未知の部分が多々あるのですが、少なくとも確かなことは、
●牛乳(または、乳糖)入りコーヒーを飲めば、「水素が増える!」
さあ今年もコーヒー薬理学を窮めるぞ!
(第122話 完)
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『医食同源のすすめ』のすすめ
昔からの言い伝えを侮ってはいけない!
「1日30種類の食材を食べていれば病気にならない」…昔からの言い伝え
「必須栄養素をガッチリ食べてカロリー制限していれば健康寿命が延びる」…先端科学
どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。