シリーズ『くすりになったコーヒー』


 この夏こんな記事がネイチャー誌に載っていました(写真は掲載誌の表紙です)。


●こぼれたコーヒーの滴が乾くと、コーヒーリングができている(詳しくは → こちら )。


 ウソだと思ったらやってみることです。ただしパソコンのないところでお試しあれ!



 実はこの現象は昔から知られてはいたそうですが、きちんとした記録に残されたのは、やはりネイチャー誌の1997年版とのことで、ごく最近のことなのです。これほど日常的なよく見かける現象を、何故わざわざネイチャー誌が取り上げたのでしょうか?同誌の解説文を引用します。


「コーヒーリング効果は日常生活で見られる面白い現象と言うだけではない。印刷用のインク、フォトニクス部品、DNAチップ製造など、精密な均一性が求められる技術には欠かせない。コーヒーリングは、球形のコロイド粒子を懸濁した滴が乾くときにできるもので(下図を参照)、楕円形に変形したコロイド粒子では決して起こらない。楕円形の粒子がコーヒーリング効果を作らないのは、粒子間引力が強く働くためである。この引力があると、粒子が液滴の縁に流れなくなるので、リングはできなくてもインクの製造には向いている(筆者追記)。界面活性剤を使えば、楕円形粒子の場合にもコーヒーリング効果が復活する。球形と楕円形の粒子を適度に混ぜ合わせれば、乾いた後に均一な円形の残渣が残るようにもできるのである」



 さて、コーヒーに溶けている、いや懸濁しているコロイド粒子には、褐色のメラノイジンが詰まっているはずなので、当然深煎りの苦味成分もこの中に多いでしょうから、コーヒーリングの色と形はコーヒーの味と効き目にも関係しているはずです。浅煎りとか深煎りで、あるいはアラビカ種とロブスタ種で、コーヒーリングの色と形に差があるでしょうか?


 イタリアンローストやエスプレッソのコーヒーリングは、古き良き日のアメリカンコーヒーと違う形をしているのでしょうか?ネイチャー誌に載ったコーヒー流体力学が、見たことのない夢を秋の夜長に見せてくれます。


(第115話 完)


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どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。