シリーズ『くすりになったコーヒー』


 前回、「コーヒーを飲んでいるとeGFR(推算糸球体ろ過量)が増える」と書きました。そして、eGFRを増やす特効薬はないとも書きました。あるのは、炭の粉を薬にしたクレメジンだけなのです。


 どうして炭の粉が効くかはさて置き、今回は血清尿酸値(sUA)とeGFRの関係について紹介します。そして、sUAを下げてeGFRを増やすコーヒーの素晴らしさを、現存する尿酸低下薬(痛風の薬)と比較してみると、新たな発見が見えてきました。話の中身が複雑な
ので、コーヒーと尿酸低下薬の関係を表にしてみました。ご覧ください。



 アロプリノームとフェブリクは、尿酸の体内合成を減らしてsUAを下げる薬です。ユリノームはできた尿酸を排泄してsUAを下げる薬です。よくsUAと炎症マーカーCRPの関係が調べられていますが、sUAはむしろeGFRと強く相関するようです。アロプリノールとフェブリクは、コーヒーと同じようにeGFRを高めます。ユリノームの確かなデータはないようですが、もし同じ傾向ならば、新たな創薬や新健康食品のヒントになりそうです。


 eGFRを高く保つことができれば、CKD(慢性腎臓病)の進行を遅くできます。何故なら、「CKDの診断はeGFRの数値に基づいている」からです。eGFRは年とともに低くなるので、高齢者はほぼ全員がCKDです。ですから、死ぬまで元気でいたいなら、CKDをなるべく高く保つ工夫が必要になるのです。


●皆がeGFRを高く保ってCKDを予防すれば、自分のためにも世のため他人のためにもなる。


 そういう訳ですから、血液検査のクレアチニン値から自分で「eGFRを計算しよう」という運動が盛んです(例えば → こちら )。


 若いうちから年の割にeGFRが低目だったら、そういうときはどうすればよいかと言いますと、答えは当然のことながら、先ずは「コーヒーを好きになる」ことです。美味しいコーヒーを適度に飲むことが、sUAを下げてeGFRを高く保つことにつながるからです。薬に頼るのはまだまだ先の話です。


 次なる可能性は、コーヒーや尿酸低下薬に似た効き目の食べものを探すこと。嬉しいこ
とに、実に多くの植物成分に似た作用が見つかっています。中にはコーヒーより強い効き目の化合物もわかっています。


●セロリ、ピーマン、シシトウガラシは、ポリフェノールのルテオリンをたくさん含んだ野菜です。


●サツマイモの皮、赤キャベツ、赤ジソ、丸ごとのブルーベリーは、ポリフェノールのアントシアニンをたくさん含んだ食べものです。


 こういう野菜や果物たっぷりのレシピで調理して、コーヒーを飲んでいれば、CKDの進行を遅くできる確率が高まります。
ところで、「sUAが下がるとeGFRが高くなる理由は何ですか?」ですって?


●身体中の尿酸が腎糸球体を通って排泄されるのですから、尿酸過剰障害を最も強く受ける身体の部分は?・・・と言えば、答えは自ずから明らかです。


(第114話 完)


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昔からの言い伝えを侮ってはいけない!
「1日30種類の食材を食べていれば病気にならない」…昔からの言い伝え
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どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。