シリーズ『くすりになったコーヒー』


●コーヒーを飲んでいる人のeGFR(推算糸球体ろ過量)は、飲まない人より7.7%高い。


 日本の医療にとって、これはビッグニュースです。もし本当なら夢が膨らむ話です(詳しくは → こちら )


 どんな夢が膨らむのでしょうか?


 もし本当なら、メタボや糖尿病が悪化して血液透析を余儀なくされる人の数が減るということです。そうは言いましても、


●eGFRは腎機能の検査値で、年齢とともに低下する。


 年をとると、いくら元気な人でも腎機能が下がります。大袈裟に言えば、「高齢者は全員がCKD(慢性腎臓病)」なのです。ですから、長生きすればするほどeGFR値は下がって、下がり過ぎると「重症CKD」と診断されて、血液透析の心配をしなければなりません。


●eGFRを高く保つ特効薬はない。


 ですから腎臓の悪い人は食事指導を受けています。高タンパク食を食べない、食塩を摂らない、コーヒーはカリウムが多いので1日1杯までとする・・・結構厳しい指導です。特効薬が望まれていますが、現実には「クレメジンという炭の粉(活性炭)」しかありません。カプセルに入った炭の粉を1回に10個、1日3回も飲むのです。とてつもなく悩ましい話です。


●同じ黒い粉だとしても、活性炭よりコーヒーの方が飲みやすい。


 さて、クレメジンは効くと言っても、一体どのくらい効くものなのか、臨床試験を覗いて見ましょう(詳しくは → こちら 、 原著論文は → こちら )。  この臨床試験の結果を引用して図に示します。クレメジンを1年間飲んだ人の平均eGFR値は、クレメジンを飲まなかった人よりも4.7%高いことがわかりました。つまり、クレメジンは腎機能の悪化を1年間に4.7%分だけ遅らせるように効いたのです。



 この結果を、コーヒーの数値7.7%と単純に比べてみます。すると、コーヒーの効き目はクレメジンに勝るとも劣らないということになります。勿論、両データは異なる試験群の異なる条件で求められたものですから、単純に比較するのは無謀です。平均年齢はほぼ同じ60歳前後ですが、平均eGFRはコーヒーの比較試験では約70、クレメジンでは約20の大差があります。ですからここでは「コーヒーには夢がある」と言うに留めておきましょう。


●コーヒーが本当に効くのなら、何が効いているのか突き詰めて、CKD特効薬を作れる可能性が生まれてきた。


 全国に1千万人は下らないというCKDとその予備群(長生きする人全員)にとって、これは本当に夢のような話です。


【製薬会社の方へお願い】あなた自身のためにも、是非とも夢を叶えて下さい。


(第113話 完)


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どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。