シリーズ『くすりになったコーヒー』


 C型肝炎の患者さんにとって、これは嬉しいニュースです。それにしても、驚くべき内容の論文が発表されたものです。でも何故、メガメディアは触れないのでしょうか?


●「1日3杯以上のコーヒーを飲むこと」が、ペグインターフェロン/リバビリン併用療法(以下、「ペグ/リバ療法と呼ぶ」)の独立した効果予測因子となる。


 1日3杯以上のコーヒーを飲んでいると、ペグ/リバ療法の効き目が強まると言うのです。一流学術誌に、米国NIHの研究グループが書いたのですから、信頼すべき内容と思われます(詳しくは → こちら


 驚くべき発見ではありますが、これまでの疫学調査結果からすれば予測できなくもありません(第60話を参照)。しかし、まさかコーヒーを飲むという日常行為に、先端医学に通じる効果があるなどと、安易な予言は無理でしょう。それでもC型肝炎の患者さんのなかには、これまでの疫学データを頼りに、コーヒーを飲み始めた人が居るのです。


 これからペグ/リバ療法を受けようと考えている人、一度受けてみたが結果が思わしくなかった人、治療は上手くいったのに再発が心配な人、治療を受けられない人・・・どんな人でもコーヒーを飲むと具合が悪いというのでなければ、誰もが「自分が美味しいと思うコーヒー」を飲むべきです。お医者さんにはその方向で患者さんに接していただきたいとも思います。NIHの論文はそう訴えているのではないでしょうか。


 論文に書かれたデータを抜粋して表1を作ったので、見て下さい。



 調査対象となったC型肝炎患者は、過去にペグ/リバ療法を受けたことのある患者で、今回は再投与ということです。その分、薬は効きにくいと思われます。総数885名のうち752名(85%)が大なり小なりコーヒーを飲んでいました。毎日必ず飲んでいた人は499名(56%)でした。治療効果の判定は国際学会で決められた方法で行われました。治療開始12週目に、コーヒーを1日3杯以上飲んでいた群では、70%以上の人に明らかな効果が見られました。そして、48週間で治療を終えた人の割合は、3杯以上飲んでいた群ではほぼ50%で、全く飲まない群の20%強より明らかに大きな数字でした。重症患者で重視される持続陰性率で見ても同じで、コーヒーはペグ/リバ療法の効果を2倍以上に強めています。


 何故これほど大きな差が出たのでしょうか? 驚きは尽きませんが、疫学調査結果から見れば想定の範囲内かも知れません。ただし、過去の疫学調査「コーヒーを飲んでいると発癌リスクが下がる」という結果からは想像し難いことです。


●コーヒーがペグ/リバ療法の効き目を強めている。


 薬理学では相乗効果以外に考えられないことです。相乗効果の中身は一体どんなものなのでしょうか? 次回は、コーヒーと最先端医学の相乗効果を考えてみたいと思います。


【論文別刷りが必要な方へ】


 PubMedからFull Textはダウンロードできません。Yahoo!で“Gastroenterology”欄の“Past Issues”をクリックします。画面の“Issues”の窓を開けて、Vol.140 No.7 Juneの欄をクリックし、目次をドラッグして“Coffee consumption…”のpdfが見つかれば、無料でダウンロードできます…念のため。


(第110話 完)


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