シリーズ『くすりになったコーヒー』


 人類の進化は危機の繰り返しでした。誰もが知っているのは自然災害と疫病のように突然やって来たのです。ところが、


●身体のなかの酸化ストレスは、誰もが罹る慢性病と老化の原因。



 上の絵のように、人は酸素を吸って食べものを酸化して(俗に“燃やして”とも言う)、エネルギーを得ています。でも、自然の法則には逆らえず、廃棄物が溜まります。なかでも活性酸素は厄介です。


●活性酸素は、処理しても処理しても、生きてる限り出続けるので、結局、世代を交代して御破算にするしかない。


 人は文字どおりに命を懸けて酸素を吸っているのです。それでも元気なとき活性酸素の存在を感じないのは、センサーが五感の外にあるからです。


 活性酸素を感知して消去するため、人の遺伝子には抗酸化システムが出来ています(図を参照)。今世紀になって、このシステムの存在と役割が解ってきました。まずそのスイッチは、センサーが活性酸素を感知するとONになり、Nrf2というタンパク質が染色体に入り込んで、抗酸化遺伝子に働いて、抗酸化物質ができるのです。自分で作った危ないゴミを自分で始末するシステムなのです。


●もしこのシステムを刺激する物質があれば、薬としての価値がある。


 野菜や果物の成分には、Nrf2を元気にするものが沢山あります(詳しくは → こちら


 コーヒーのクロロゲン酸もその仲間です。コーヒーにはその他にも、これまであまり知られていなかったN-メチルピリジニウムという独特の成分が含まれています(詳しくは → こちら


●コーヒーを飲むと、異なるタイプの成分が相乗効果を発揮する可能性がある。


 コーヒー成分の相乗効果を示唆する最新の情報は、深煎りの方が浅煎りより抗酸化作用が強いという人対象の試験結果です(詳しくは → こちら


●深煎りコーヒーは、体内で抗酸化物質のリサイクル効率を高めている。


 しかしこの分野は、医薬品としてまだ未開発なので、研究の成り行きを注目したいと思います。


(第109話 完)


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昔からの言い伝えを侮ってはいけない!
「1日30種類の食材を食べていれば病気にならない」…昔からの言い伝え
「必須栄養素をガッチリ食べてカロリー制限していれば健康寿命が延びる」…先端科学
どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。