シリーズ『くすりになったコーヒー』
コーヒー豆は火で煎るのが当たり前と思われていますが、それだけではありません。
●昔からコーヒー豆を、水蒸気で煎った人がいた。
昔と言っても大昔ではありません。加熱した水蒸気を使い始めたのは、せいぜい前世紀の終わりごろからのようです。どんな目的があったのでしょうか?
●やにが出ず、苦くもならないはずなのだ・・・?
という期待があって、苦くないコーヒーが目的だったのです。酸素をできるだけ遮断して、水蒸気焙煎を試みる人達があちこちに現れました。ちょうどその頃、脂肪の取り過ぎは身体に悪いということで、高温水蒸気を使ったウオーターオーブン「ヘルシオ(シャープ社)」が発売されました。かくいう筆者も買い込んでコーヒー豆をチンしたのです。
しかし、「ヘルシオ」はコーヒー豆には不適でした。温度が300度までしか上がらないからです。
●もっと熱が要る!
と考えたのは、イグノーベル賞を受賞した広瀬幸雄さん(金沢大学名誉教授)でした。流石は工学博士です。実験に実験を重ね、失敗をはねのけて作った機械がこの写真!その名も広瀬幸雄の「過熱蒸気式コーヒー焙煎機」で、500度以上の性能が出ます。
で、どんな味がするかと言いますと、えも言われぬ味なのです。敢えて比較するならば、銀座のカフェ・ド・ランブル、新橋駅前の駅舎珈琲店のブレンドに似た味と香りのように感じました。
●過熱水蒸気焙煎豆の最大の特徴は、コーヒーを自分で淹れられない人が、ヤカンで煮出して、高級喫茶店の雰囲気に浸る。
つまり、焙煎コーヒーの技を磨かなくても、誰でも簡単に一級品の味を出せるコーヒー豆になるのです。筆者には最適の豆とも言えます。そして広瀬先生の次なる目的は、「普通に煎ると無くなってしまう栄養成分を残したままの豆」であることを確かめることです。そうなれば、「コーヒーの処方箋(医薬経済社を参照)」に俄然現実味が湧くのです。
●美味しいコーヒーであればこそ身体に良いコーヒーなのだ。
(写真は、銀座カフェ・ド・ランブルにて/8月23日撮影)
(第108話 完)
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『コーヒーを科学するシリーズ』
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『医食同源のすすめ』のすすめ
昔からの言い伝えを侮ってはいけない!
「1日30種類の食材を食べていれば病気にならない」…昔からの言い伝え
「必須栄養素をガッチリ食べてカロリー制限していれば健康寿命が延びる」…先端科学
どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。