シリーズ『くすりになったコーヒー』


●実は、コーヒーには漢方薬に似た証(しょう)がある。


 記念すべき第100話となりましたので、何か後世に残る言葉を残したいと思いました。まずは図をご覧ください。最初の図は、医薬産業政策研究所が2010年に発表した疾患別「薬の効き目と患者の満足度」の関係です。


 横軸は治療を受けた患者の満足度、縦軸は治療に占める薬の貢献度です。円の数字は調査期間内に開発された新薬の数となっています。対角線の方向で右上に位置する病気ほど、薬がよく効き、満足度が大きいことを示しています。高血圧の薬はよく効きます。逆に左下はアルツハイマー病で、治すくすりがありません。つまりどんな病気に罹っても、よく効く薬がありさえすれば患者の満足度が大きいのです。薬の大切さがわかります。


 ここで注目して頂きたいことは、飲むべき薬は病気によって違うということです。右上の高血圧に効く薬と、左下のアルツハイマー病の薬はまったく別物です。


●病気になったら名医の診察を受けて、正しく病名を決めてもらう必要がある。


そうです・・・そうなんです・・・そうしないと効く薬が見つからないのです。医者が薬より診断に気を使うのはそのためです。



 では、コーヒーが病気のリスクを下げる効果はどうなっているでしょうか?


●やがて罹る病気が何だかわからなくても、コーヒーは確実に予防薬になる。それでも病気になるとしたら、その病気はコーヒーの証ではないと言うことだ。


 次の図を見てください。コーヒーがリスクを下げる病気を赤い丸で囲みました。



 コーヒーで予防できる病気は対角線上に長く広がっているのです。そうです、これは非常に重要な発見です。コーヒーの病気予防効果は、新薬の病気治療効果とは全然違っているのです。


●コーヒーで予防できる病気は沢山ある。


 コーヒーは病気を治すのではなくて、病気になるのを防いでいるのです。一度病気になってしまえば、もうコーヒーでは治りません。病気になる前からコーヒーを飲んでいれば、少なくとも15種類の病気のリスクが減るのです。何故コーヒーという1つの飲みもので、これほど多くの病気を予防できるのでしょうか?


 これをきちんと説明するには、相当語らなければなりません。ですからこのブログでは、「コーヒーは新薬よりも漢方薬に似ている」と言うだけにしておきます。ただしコーヒーと漢方薬では使い方が全く違っているのです。


《コーヒーと漢方薬の違い》


1.コーヒーは美味しいと言って飲む人が大勢いるが、漢方薬が美味しいと言って飲む人は少ない。


2.コーヒーは自分で勝手に飲むが、漢方薬は漢方医学の名医に処方してもらわないと危ない。


3.コーヒーは健康な人ほど多く飲むが、漢方薬は病人ほど多く飲む。


4.コーヒーは一度飲み始めたら病みつきになるが、漢方薬は病気が治れば飲まない。


5.コーヒーは嗜好品だが、漢方薬は薬である。


 5番目の「嗜好品と薬の違い」に総括されているように思えます。漢方薬は未病、即ち身体に変化があっても病気ではない状態に使う薬ですが、コーヒーは未病どころかもっとずっと前のまったく健康な状態から飲むものなのです。


●コーヒーには、病気の始まりの始まりのほんの僅かな変化を修復する力がある。


 ということで、その力の源を探る旅に出たいと思います。折に触れて旅の成果をお伝えいたしましょう。


(第100話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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