シリーズ『くすりになったコーヒー』
最近しばしば耳にするフェルラ酸とは、アルツハイマー病に良いというサプリメントの1つです。2015年の医道審議会で倫理違反の処分を受けたコウノメソッド(第296話を参照)ですが、そこでも使われたフェルラ酸サプリは健在です。しかし、アルツハイマー病との因果関係に依然として結論はありません。
フェルラ酸の臨床試験で有意なデータが得られているのは、脂質代謝プロフィールです。特にLDL検査値が有意に低下していることは注目に値します。この試験では、併せて血液中の炎症マーカーTNFαなどの減少が確認されています。そこで論文著者は、フェルラ酸サプリが高脂血症患者の粥状動脈硬化〜虚血性心疾患への展開を予防すると考察しています(詳しくは → こちら)。
日本でもフェルラ酸サプリを販売する会社があります。しかし筆者が思うには「フェルラ酸は多くの野菜や穀類に含まれているので、食事で補給するに越したことはない」ということです。フェルラ酸を特に多く含んでいて、かつ多くの人が1年を通じて毎日口にするのはコーヒーです。そこでコーヒーに含まれているフェルラ酸の量をできるだけ正確に予測してみることとします。
図1でお分かりのように、フェルラ酸を含む生豆成分は色々ですが、体内に入ると大なり小なりがフェルラ酸に変わります。生豆に含まれている総クロロゲン酸の量は、アラビカ種で300-400?/10g、ロブスタ種では400-800?/10gなので、10gの生豆を飲めば少なくとも50-100?のフェルラ酸が体内に入ると考えられます。焙煎するとその量は減りますが、浅煎りを数杯飲めば十分に薬理作用量に達すると考えられます。
では、コーヒー以外の食材についてフェルラ酸含有量まとめた表をご覧ください。
コーヒーの数値を赤枠で囲みました。この表は100g当たりなので、1杯10gに換算すると、生豆に比べて極めて少ない0.91-1.43?となります。筆者の経験によりますと、この数値は真っ黒になるまで深く煎った豆に相当しています。図2をご覧ください。真っ黒とは、フレンチやイタリアンと言った深煎りのことで、フェルラ酸を含むクロロゲン酸がほとんどなくなることが解ります。コーヒー1杯の数値を表の上の方にあるナスやゴボウ100g相当まで高めるには、焙煎度を浅くしてシナモン位に抑えればよいということもご理解いただけると思います(図2を参照)。
●細かなことはさておいて、毎日飲むコーヒーは季節によらず年間を通じて最も確かなフェルラ酸の供給源になっている。
高脂血症患者の場合、食事のたびに1杯のコーヒーを飲むことが、脂質代謝を改善し、炎症を抑えて、心血管病のリスク回避に確実につながっているのです。
(第365話 完)
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