シリーズ『くすりになったコーヒー』
新年おめでとうございます。
NPO法人「HAB研究機構」は新薬創製を支援する学術団体です。昨年12月に千葉県市川市の事務局を訪問したとき、事務長さんが嬉しい話をしてくれました。
事務長 「千葉でコーヒーの実が実ったんです」
私 「ベランダに温室でもあるんですか?」
事務長 「我が家のベランダは吹き曝しです」
私 「えっ!聞いたことないですよ」
事務長 「写真撮ってありますから」
ここで一旦話を中断して、神戸のUCCコーヒー博物館に電話をかけました。千葉に限らず、沖縄を除く日本列島でコーヒーの木が実ったことがあるかどうか確かめるためです。館長さんの話では、やはり「聞いたことのない話」とのことでした。
HAB事務長さんの撮った写真をお見せしましょう。
たったの2粒ですけれど、千葉県白井市桜台にあるマンションのベランダで、確かにコーヒーの木が実ったのです。11月に気がついて、12月の寒風に曝されても若い実は着実に大きくなっているのだそうです。
事務長 「もうすぐ赤くなりますよね」
私 「赤くなるまでは半年以上かかりますよ」
事務長「え!そんなにかかりますか。じゃあ部屋のなかに入れた方がいいですね」
ということで、ベランダのコーヒーの木はその晩から室内に移されましたとさ。
さて、この木の由来はと言いますと、2年前に事務長の奥さんがコーヒー店に行ったとき、店の人に勧められて買ったのだそうです。まさか「花が咲き実がなる」とは思ってもみなかったそうで、今回の大発見ではいつ花が咲いたのかわからないそうです。
それは兎も角、赤道の南北25度以内のコーヒーベルトから遠く離れた千葉県で実るなどと、誰も考えていないでしょう。でもこれは本当の話です。地球温暖化の影響がコーヒーベルトを北緯35度まで広げてしまったのでしょうか。
ごく普通のマンションのベランダで、水だけかけて放っておいた鉢植えコーヒーの木に実がなりました。あと数年後にはもっとたくさん実ることでしょう。朝は薄氷の張るベランダでよくも頑張ってきたものです。
鉢があった頃のイメージです。
【報道関係の方へ】4月になったらHAB研究機構を取材して下さい。日本がコーヒー産地になる日はさほど遠くなさそうです。
(第84話 完)