シリーズ『くすりになったコーヒー』


 今回から「コーヒーの毒」を連載します。


 1991年、国際癌研究機構(IACR)は、「コーヒーを飲ませたマウスの腫瘍が大きくなった」という1編の学術論文を引用して、コーヒーの発癌性について下表のように分類しました。


●コーヒーの発癌性は2B分類に属する。



 コーヒーの発癌性を疑わせる原因の1つは「アクリルアミド(2A分類)」です。アクリルアミドは加熱調理した食品に含まれています。コーヒーにはどれくらい含まれているのでしょうか? また、他の食品と比べてどの程度の含量なのでしょうか?データの出所によって差があります。


●厚労省の発表  最大231マイクログラム/キログラム


●農水省の発表  最大975マイクログラム/キログラム


●欧米諸国の発表 最大230マイクログラム/キログラム


 次に、アクリルアミドを最も多く含む食品は、ポテトチップとフライドポテトとのことです。


●ポテトチップ  117〜3770マイクログラム/キログラム


●フライドポテト  59〜5200マイクログラム/キログラム


 厚労省の指針によれば、毎日大量のポテトチップやフライドチキンを、食事代わりに食べていない限り、心配は要らないようです。でも、多めのアクリルアミドの動物発癌性は確かなことなので、保存状態がよくないとか、焦げ色の強いものは食べたくないなあ・・・という気持ちになってしまいます。


 コーヒーは安全かと言いますと、前回までに書きましたように、コーヒーを毎日飲んでいると肝臓癌リスクは確実に下がりますし、子宮体癌や女性の大腸癌リスクも下がります。逆に、コーヒーが発癌の原因になるという調査結果は、膀胱癌でまだ結果が曖昧という以外ほとんど見当たりません。


【関係省庁の関係者の方へ】表の中身について、そろそろ再評価されては如何なものでしょうか?


 ただし、疫学調査にはコーヒーの焙煎度まで掘り下げた高い精度はありません。アクリルアミドを比較的多く含む深煎りコーヒーを好んで飲む人が、そういう曖昧さから解放されるには、炭のようにまっ黒なコーヒーを遠慮しておく方がいいかも知れません。


●コーヒーは好きだが癌は心配という人は、あまりにまっ黒なコーヒーを避ければ大丈夫。


(第79話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』を購入される方は下部のバナーからどうぞ