シリーズ『くすりになったコーヒー』


 医療費抑制の目的で、政府はセルフメディケイションを奨励しています。症状の軽いうちに大衆薬を買って治療すれば、病院へ行かずにすむというわけです。となりますと、大衆薬のことをよく知っていなければ上手く行きません。


●売れ筋の大衆薬にはカフェインが入っている。


 下の表に、日本の売れ筋大衆薬の数を薬効別に書きました。その上で、カフェインを加えた商品の割合を数えました。この表を見ていますと、色んなことが想像できます。



【想像すること】


○眠気覚ましはカフェイン以外にない。


○かぜ薬の90%、解熱鎮痛薬の80%にカフェインが入っている。入ってないのは子供用だけ?


○車酔いにもカフェインが効くらしい。


○ビタミンなどの滋養強壮薬にもカフェインが必要?(注:カフェインは栄養素ではないのに)


○昔カフェインは喘息のくすりだったから、その名残が咳止めにあるみたい。


○カフェインの入った催眠薬は、昼間飲むのだろうか?(夜眠れるように・・・)

etc. etc.


 かぜ薬と解熱鎮痛薬で、カフェインの入っていない商品は、と言いますと、小児用だけです。子供のカフェインは悪いものだと言い伝えられているからでしょうか・・・。それならどうして未熟児無呼吸症の治療にカフェインが使われるのか、不思議です。「カフェイン もうドーピングなどとは言わせない」参照(詳しくは → こちら )。


 疑問は色々ありますが、悪いという特段の理由がない限り、昔からの言い伝えは守った方がよさそうです。ただし、カフェインについては相反する言い伝えがあるのです。


【言い伝え1】大衆薬にカフェインを入れるとよく効くようになる(相乗効果が出るから・・・?)。


【言い伝え2】病気のときはカフェイン飲料を飲まない方がよい(カフェインは刺激性だし、くすりと相互作用するから・・・?)。


 カフェインには矛盾する話が他にも沢山あります。一体どちらが正しいのか、そういうことにきちんと答えが出せないようでは、セルフメディケイションは叶わないように思えます。


 一例です。


●医者の処方箋で買ったくすり(カフェインは入っていない)をコーヒーで飲んでよいか?


【無難な対処法】一応クスリは水で飲んで、コーヒーを飲みたければしばらく経ってから飲めばよい。


(第77話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』を購入される方は下部のバナーからどうぞ