シリーズ『くすりになったコーヒー』


 以前にコーヒーとアルツハイマー病の関係を書きました(第64話を参照)。今日は、アルツハイマー病も含めた「呆け」について、疫学調査の結果をまとめます。


 図は前世紀末からこれまでに公表された調査結果のまとめ(メタ解析)です。まずアルツハイマー病とコーヒーの関係は4つの論文に書かれていて、コーヒーを飲んでいる人の発症率は飲まない人の平均65%ということです(赤◇)。


 次に、痴呆と認知障害の論文発表はそれぞれ1つずつしかないので、コーヒーとの関係があるのかないのか、まだ何とも言えない状況です。


 最後は認知力低下です。図の6つの論文発表を見る限り、コーヒーに認知力低下を防ぐ効き目はなさそうです(青◇)。



 ということなので、呆けのなかでコーヒーが利きそうなのはアルツハイマー病だけと言えます。詳細は第64話に書いたのでそれを参照して下さい。ここでは、効くという論文もあるにはある「認知力低下」について少し考えてみます。


「認知力低下」のような呆けの原因の1つに脳血流障害があります。高脂血症や動脈硬化から始まって、脳の血液循環が悪くなり、脳神経に酸素と栄養が不足して、なかには死んでしまう神経が出てくるのです。となりますと、例によって悪玉LDLを減らして、血液をサラサラにしておく必要がありそうです。何やら前回書いた脳梗塞の予防とそっくりですから、もしかしたら、「アルコールが呆けに良い」かも知れません(詳しくは → こちら )。


 そこで「呆けを防ぐコーヒーのレシピ」とは、


●紙フィルターでろ過したコーヒーに少々のブランデーを入れて飲む。


 ところで、認知力低下のような症状は診断の決め手に欠けるので、疫学調査自体に無理があります。更には、20年も前のことですが、当時は沢山あった脳循環改善薬と称する呆けのくすりが、市場から回収されるという事件が起きました。どうやら、


●血の巡りを良くするだけでは、呆けは止められない。


 ということなのです。当分の間はコーヒーを飲めば目が覚めて気分もよくなるということで満足しておくのがよさそうです。少なくともコーヒーを飲んで呆けが早まったという話は聞きませんから。 


(第74話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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