シリーズ『くすりになったコーヒー』


●普段コーヒーを飲まない人がコーヒーを飲むと血圧が上がる。毎日飲んでいる人への影響はほとんどない(詳しくは → こちら )。


 とは言え現に高血圧の人がコーヒーを飲むとどうなるかという調査は不十分です。降圧薬を飲んでいる人はとりあえず少なめにした方がいいでしょう。筆者の場合、アムロジンとディオバンのご厄介になりつつ、1日2杯のコーヒーを欠かしません。豆の重さとして約30グラムですが、血圧130〜80をキープしている次第です。


 今世紀になって、花王食品がユニークな研究成果を発表しました。


●焙煎コーヒーに含まれているHHQを除去すれば、コーヒーは高血圧に効く。


 実際のところ、生のコーヒー豆を煮出して飲めば、血圧は確実に下がります。有効成分はクロロゲン酸由来のカフェ酸とフェルラ酸です。効き目のメカニズムは、副交感神経系の3型ムスカリン受容体(M3)刺激で、フェルラ酸>カフェ酸の関係になっています(詳しくは → こちら )。


 生のコーヒー豆にHHQは入っていません。


 下の図は、花王食品が発表したグラフです。左側は収縮期、右側は拡張期、各図の左端は、クロロゲン酸を299mg、HHQを1.7mg含んだコーヒーで、効果はほとんどありません。右の4つは、HHQを50分の1まで減らしたコーヒーで、クロロゲン酸を0〜299mgの範囲で変えてあります。収縮期の効果は、クロロゲン酸が増えると強くなりました。飲む量に比例して強くなるクロロゲン酸の薬理効果に、製薬会社はびっくりです! HHQの阻害効果にも、「信じられないっ!」と、これまたびっくりです。



 焙煎コーヒーからHHQを初めて検出したのは、筆者の職場の先輩菊川清見名誉教授でした。「焙煎でできるHHQは体内で過酸化水素を作って病気を起こす」との考えで研究していました。逆に筆者は「コーヒーの病気予防効果」を調べていたので、両方を合わせれば次のようになるのです。


●焙煎コーヒーからHHQを除去すれば、更に効率よく病気を予防できる。


 花王食品の研究はその高血圧版です。HHQを活性炭のような多孔性吸着材を使ってろ過する方法が特許になりました。特許と言っても、歴史的なコーヒーの淹れ方と本質的な違いはありません。その証拠に、疫学調査では、フィルターコーヒーが最も優れた病気予防効果を発揮しています。紙フィルターや綿ネルフィルターで簡単にろ過したコーヒーが、身体によくないものを除去してくれるのです。


●誰でも出来るコーヒーの淹れ方は、奥の深い医療技術です。


【医師と薬剤師の方へ】血圧が高めの人、降圧薬を飲んでいる人から「コーヒーを飲みたいが・・・」と聞かれたら、「浅く煎ったコーヒーをフィルタードリップで」がよいのでは・・・ご検討下さい。


 (第71話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による下部のバナーからどうぞ