シリーズ『くすりになったコーヒー』


●咳(せき)にも色々ありますが、ぜん息ほど厄介なものはありません(詳しくは → こちら )。


 咳とは、気管に入り込んだほこりなどを追い出すための生体反応の1種です。外から入り込むだけでなく、自分で気管に分泌した“たん”のようなものも咳で追い出しているのです。ですからもし咳をしなければ、気管のなかはゴミ捨て場のようになってしまいます。


●ぜん息とは、異物がなくても喘鳴(ヒューヒュー音)が聞こえたり咳が出る病気です。


 ぜん息では、気管支の炎症が慢性化しているので、ちょっとした刺激で発作を起こし、狭くなった気管がヒューヒュー音を出し、息が苦しくなってしまいます。ですから、発作が起こらないように予防することが大切なのです。


●気管支を広げておけば発作が起こりにくい。


 気管支拡張薬は、専門用語でメチルキサンチン類と呼ばれるカフェインの仲間です。テオフィリンがなかった時代の治療では、コーヒーやお茶のカフェイン抽出物が使われていました。前世紀の中頃、テオフィリンを分離・精製する技術が出来ると、カフェイン抽出物に代わって、より効果的なテオフィリンがぜん息薬になりました。


●コーヒーを飲む人はぜん息になりにくい・・・ただし、リスク低下率は30%程度で確実ではない。


 ですから、普段からコーヒーやお茶を飲む習慣は、ぜん息発作の予防になると言って、患者に勧めるお医者さんはたくさん居ます。なかには、テオフィリンを飲んでいると、作用が相加的になるので止めた方がいいというお医者さんも居られますが、コーヒーが好きならば、適量にしておきなさいというお医者さんも居ます。自分で自分の適量を、経験的に知っておくことが大事です。


 ところで咳の予防には食べ物の影響が出ることをご存知でしょうか?


●咳を予防する食べ物が色々ある。


□カフェインを含んでいるコーヒーかお茶を飲む。ミントティーも気分転換になる。


□キャベツ・・・煮汁も全部飲む。


□コリアンダー、キンマ・・・コショウでもよい。咳の時に煮出して砂糖で味付けして飲む。


□ザクロの皮・・・干したものを売っている。お湯で煎じて飲む。


□カルダモン、ウコン・・・ショウガでもよい。どんな料理でもよいので調理して食べる。


□マスタードオイル・・・全穀麦で作ったパンや、ハム、ソーセージにたっぷりぬって食べる。


□ニンニク・・・匂いが駄目なら、海藻と一緒に水につけておくと、一晩で匂いが消える。


□水・・・基本的に今までより水を多く飲む習慣を身につける。コーヒーでもよい。薄めて飲むのもよい。咳が出ているとき、水を一口飲むとおさまることだってよくあります。


 さて高齢者の人は、五体満足のうちから咳を大事にして下さい。


●咳をしても痰が切れにくい人、要注意。


 カフェインは筋肉の収縮力を強めます。効果のある咳に必要な全身の筋肉運動は、年とともに衰えます。カフェインを飲んでいると横隔膜の使い方が上手くいって、弱った筋力を補います。市販の咳止めにだって、ちゃんとカフェインが入っています。


「カフェインは身体の水分を減らすので、痰が濃くなって喀出しにくくする」との意見がありますが、そんなことはありません。コーヒーやお茶を飲んで水分を補給するので大丈夫です。水分を補給しながらカフェインをとれば、気管支が膨らんで痰が切れやすくなるはずです。もう1つ、気管を乾かさないために、睡眠中のマスクは役に立ちますよ。


 とは言いましても、咳には個人差がありますから、自分の咳の癖を知って憶えておくことが大事なことです。食べものとの関係は特に大事ですよ。


(第68話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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